6.伊香保温泉、アゲイン。ただし……
アラサーになった私たちですが、私と丸田君はちゃっかりカップルになっていました。いつの間にか友情が恋に変わったってやつですね。照れるなぁ。
そんな丸田君は、アラサーになると車を手に入れていました。
「車を買ったんだし、ちょっと遠めのドライブに行こうか」
丸田君のこのお誘いに私はノリノリで賛同しました。
「どこ行く? どこ行く?」
目をキラキラさせる私に対して、丸田君はこんな提案をしました。
「伊香保温泉に日帰りでまた行ってみようか」
というわけで、伊香保温泉アゲインです。ただし、前とは少し違う事情が……。
私はこの頃には、かつてのひょろがりからでっぷり肥満体へとサイズアップしていました。
でも、遠方にドライブに行けるという嬉しさのあまり、かつての悲劇の事など忘れていたのです。そう、巨漢平沼君の悲劇の事を……。
***
この日は水沢うどんは食べずに伊香保温泉に直接行った私たち。この頃の私なら、きっと水沢うどん店でこう言い放ったでしょう。
「大盛りで!」
大盛り。そうさ。二十代前半の時よりもアラサーになってからの方が私は食欲が増していたのよ。
なんやかんやで水沢うどんは食べに行かなかったので、とりあえず石段に着きました。かつての印象が「石段なんて大したことない」だったので、私は三百六十五段の石段を舐めていました。
「今日は頂上にある源泉に行ってみようよ」
丸田君がそんな提案をしました。
「源泉!? 行くー」
私は、全然考えていなかったのだ。三百六十五段を肥満体が登るという困難さを。これから私に降り注ぐ悲劇を。かつての暴言がブーメランになって返って来るという事を。
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