3.水沢うどん
高崎線に延々と揺られて、おしゃべりに夢中になっている間に渋川駅に着きました。どうやらここが伊香保温泉の最寄り駅らしいです。
時刻は十一時過ぎ。丁度お腹が減る頃です。そこで、食いしん坊の平沼君がこんな提案をしました。
「水沢うどんを食べに行こう」
これに丸田君が乗っかります。
「いいねー。水沢うどんと舞茸の天ぷら! 最高やんけ! 今日は運転しないからビールも飲もうぜ!」
私は頭が???
「水沢うどん? おいしいの?」
平沼君は呆れかえって私を見ます。
「お嬢……水沢うどんも知らんのか。いいから黙ってついてこい!」
「らじゃ!」
渋川駅から路線バスに乗って水沢うどんのお店がある集落に向かいます。
三十分ほどバスに揺られたでしょうか。水沢バス停で降りると、数軒の水沢うどん店が並んでいます。
「どれに入ったらいいのか分からなくない?」
私はきょろきょろとしています。何となく丸田君が知っていそうなので、丸田君の「ここがいいんじゃない?」を信じてお店を選びました。
店に入ると、そこには芸術が爆発しちゃってる芸術家の作品が所狭しと並んでいました。
「何だこのうどん屋。芸術が爆発しちゃってるぞ……?」
でも、それだけ芸術作品が買えるという事は、このお店が儲かっているという証拠なので、「ここは美味しいはず」と三人の意見が一致しました。
大広間に通されると、沢山のお膳が並んでいて、その一角に私たちも座らされました。
「水沢うどん三つと舞茸の天ぷら三つとビール一本グラスは三つで!」
丸田君がすらすらとオーダーをしてくれます。「昼からビールだなんておっさんみたい」という私の心中など知る由も無く。
少し待つと料理が運ばれてきました。
初めての水沢うどんは、コシが強くてとても咀嚼力のいる食べ物でした。当時はひょろがりだった私は、咀嚼するだけでお腹がいっぱいになってしまい、うどん半分と舞茸の天ぷらほぼ全てを残しました。
「丸田君、平沼君。良ければ食べてくれたまえ」
「「しかたねーな―」」
余った料理は丸田君と平沼君の胃袋に収められます。丸田君は柔道初段で細マッチョ。平沼君は百八十センチ以上百キロ超えという巨漢。水沢うどんと舞茸の天ぷらを一人前以上平らげるなど朝飯前だったみたいです。
「「「あー、満腹。ごちそうさまでした!!」」」
大満足の三人でしたが、ここから始まる悲劇をこの時は誰も予想していなかったのでした。
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