命懸けの愛

汐なぎ(うしおなぎ)

全一話

「お前は、あと三分後に死ぬ」


 拳法家は、そう言って俺を指さして笑う。男が言うには、どうやら俺は、秘孔ひこうというものを突かれたらしい。


 しかし、俺は「死ぬ」という恐怖よりも、目の前でかっこよく死を宣告する男の方が気になって仕方がない。


 俺の胸がドクドクと高鳴る。


 間違いない。俺は恋に落ちたんだ。


「愛している。お願いだ。死ぬ前にキスをしてくれないか?」


 俺は男に懇願する。


「何を言っているんだ?」


 俺の言葉に、男は驚いて目を見開く。男は明らかに動揺していた。


 しかし、俺は恋に落ちてしまったんだ。この気持ちは間違いではない。殺すと言うなら、せめて最後に責任を取って、俺の願いを叶えて欲しい。


 あと一分――――。


「早くしてくれ! 時間がない!」


 しかし、目の前の男は、俺の願いを叶える気はないようだ。さっきから、全く動く気配がない。


 残り十秒――――。


 俺は叫ぶ。


「ぎっっずっっっっっっ――――――!」


 その瞬間、俺の体は弾け飛んだ。

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命懸けの愛 汐なぎ(うしおなぎ) @ushionagi

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