第3話 ストーカー

5月、マサシはアパートに帰宅し、夕飯を食べてその日に出た課題を終わらして風呂に入りテレビを眺めていた。大学での交友関係は悪くなく充実な日々を送っていた。しかしマサシはどこかに穴があるような気持ちだった。そんな生活をずっと続けている。やることも無くなり明日の講義のために就寝した。


翌日、1限の講義は自由席で前の席は嫌で早めに家を出た。そして講義が始まるまでウンスタのストーリーを見ていると「隣、いいですか?」と高めの可愛らしい声が聞こえた。女子かよ。マサシは静かに思った。マサシは高校までスポーツばかりで恋愛なんてしていないため女性への耐性がない。しかし、断るのも気まずいので「どうぞ」とだけ言った。女子が隣座り講義の準備をしていた。その隣の女子から物凄い視線を感じる。しかし女子と目を合わすのが苦手なので、ひたすらスマホを見ることにした。すると女子が「え?やっぱりマサシだよね⁉︎」と発した。まさかの知り合いだった。大学でできた友だちの場合さっきまでの対応は非常にまずいと思い、すぐさま顔を向けた。「…だれ?」マサシは考えるよりも先に言葉が出た。

「覚えてない?中学1年の時同じクラスだった津田!津田桜だよ!」

「あ、あー!サクラか!え、久しぶりじゃん」

そう、彼女は中学1年の時に同じクラスだった子だ。席替えで隣になりよく俺に話しかけてくれた子だ。俺の唯一素で話せる女子であった。しかし、久しぶりの再会とは気まずいものだ。

「お前、同じ大学だったんだな。しかと学部も一緒って奇跡かよ。」

「たしかにー!これからも仲良くしてね!」

「お、おう。」

サクラはコミュニケーション能力が高く、誰とでも会話ができる人あたりの良い子だ。特別美人でも可愛いわけでもないが、その人あたりの良さが男子の人気が高かった。告白した男子もいたらしいが、全部断っていたらしい。人あたりが良すぎて裏があるのでは思い、恋愛対象にならなかった。こうして話していると、今も中学と変わらずいい子なんだなと思わされた。



私の名前はサクラ。となりにいるのは中学の時1年間だけ同じクラスだったマサシ。高校は県外に行ってて、そこからは連絡も取ってないのに同じ大学で同じ学部だなんて奇跡だ!


というのは嘘。中学1年の時同じクラスで一目惚れしたの。そこからは手段を選ばなかった。交友関係を男子まで広げて、マサシくんの情報を手に入れまくった。趣味も高校の進学先も全部聞き、高校では毎週練習試合をしていたから月一で観に行った。正直めちゃくちゃカッコいい!どの男子も霞むくらい!大学では同じとこに入学するためにマサシくんの情報を手に入れるために、マサシくんの親とコンタクトした。三者面談で顔は覚えているからマサシくんの家の近くのスーパーを夕方頃うろつき、マサシくんのお母さんを見つけすぐに近づいた。「マサシくんのお母さんですよね!中学の時同じクラスで見たことあったんで!」と、コミュニケーションを取り母親と仲良くなった。そこから進学する大学の名前と学部を聞いて入学した。

私から告白なんてできない。恥ずかしいし、死ぬ。だからマサシくんから告白してもらうためにずっと付き纏った。だけど全然恋愛対象として見てくれない。


今度こそ告白してもらうんだから


そう、彼女は俺の人生を変える1人目であった。

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