第7話
「掛け蕎麦。ネギ抜きで」
クレイウォーカーの燃料補給がてら、私は近くにあった立ち食い蕎麦屋で注文する。
蕎麦屋の亭主は手際良く蕎麦を茹でて昆布出汁の温かいつゆを作り、1分以内に私に提供してくれる。
私は蕎麦を啜っている間に一仕事終えた亭主はモニターの電源をオンにしてバーチャルアイドルのアイドルソングを聴いている。
私はそんな亭主と一言も話さず、黙々と食べる。
時間にして3分。つゆも飲み干して完食するのも合わせれば、5分か・・・まあまあの記録だ。
「ご馳走になりました」
「・・・あんた、社畜の類いか?」
「私程度を社畜と呼ぶのか分かりませんが、ある程度の社会経験はあるかと思います」
「そうかい。まあ、別に構わんが、オーシャン社の社員にしちゃあ、身なりに気を使っているし、ある程度のレベルの社員なんだろ?」
「申し訳ありませんが、守秘義務がありますので」
「別に構わんさ。ただ、こいつは俺の独り言だ」
私は亭主の独り言に付き合いながら会計を済ませる。
「オーシャン社はろくな会社じゃない。他で仕事したくなったのなら、アットブル社へ行きな」
「そんなに恩恵がでかいので?」
「おっと、独り言がでかかったようだな。悪いが聞き流してくれ」
亭主は店から出る私に「毎度」と言うとバーチャルアイドルの歌を聴きながら、いつもと同じ日常を取り戻す。
恐らくはオーシャン社を辞めた私が異物なだけだろう。
確かにアットブル社は良い会社なのかも知れないと言う先入観が少しずつではあるが、出てくる。
この際、アットブル社へ入社希望をした方が良いだろうか?
そんな事を悩みつつ、私は当てのない職場探しを続けるのであった。
社畜騎兵グレイヴ・ウォーカー 陰猫(改) @shadecat_custom5085
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます