第10話 人の声って、恐ろしくて、有り難い。



◆人の声って、恐ろしくて、有り難い。


例えばそこそこ本が売れてる作家になれたとしましょう。某小説サイトでトップランカーとなって書籍化。


ところが1通もファンレターが来なかったとします。


そこへようやく届いた感想のメール。嬉しい! (紙でも電子でも好きな方で想像して下さい)

早速中身を確認する。その内容は……


「つまらねえからもうヤメロ」


ショックを受け頭から離れなくなる。気晴らしに出掛けようと電車やバスに乗る。女子高生が楽しそうにおしゃべり。オンデマンドのドラマの話題。原作小説はもっと良いよ、と力説。


その原作を調べてみる。あまりヒットもしていなかったWeb小説から採用。


―――何だ、自分より売れてる訳じゃないし……

ところがコメントには称賛の嵐。


う……でもでも! 自分の本は売れてるし! 部数だってこっちの方が上だし!


あの誹謗のコメントがもう頭から離れない。離れてくれない。


思い切ってレビューサイトでエゴサーチ。

様々な項目でGoodボタンとBadボタンが押せる。

どの項目も最悪。8割がBad。こんな書き込みも。

「大手がバックだからな。その力だろ」


例の作品もみる。結果は軒並み好意的だった。7割近くGoodだった。

「でもまだあの人の書籍化はアレだけだって。Web上には他にも何作も有るらしい」

「じゃ無料の内に読んでおこうか」



  * * *


かくの如く、人の怖い言葉は何時までも残り、ありがたい言葉は幻の様に消え易い。

だから幾らでも書き込んで貰って何度でも反芻出来た方が良い。

この作家の末路はともあれ、こんな想いを抱き続けるのと、書籍化は未経験だけど日々応援や感謝、好意的だったり夢中であるという感想が毎日の様に届くのと、あなたならどちらを選ぶでしょう。


人の声の影響って凄いと思うのです。今まではWeb広告に繋がるPV数を叩き出せる作者を運営も担ぎ上げてきた。そしてお金を落としてくれるハイパーオタク層をターゲットに出版をして凌いできた。


でもそれも限界に近い。


飽和し過ぎたからそれらの層ですら買わなくなった。

ところがそんな作品しか採用されないなら……と皆こぞって劣化版の二番煎じ。結果的に更にそれらが溢れてしまい、ラノベというカテゴリーその物へのブランドの持つ魅力を自らブチ壊してしまい迷走。


焦る運営は遅ればせながら『ギフト』の進呈が出来、『応援コメント』が作品タイトル直下から見れるようにUIを変えてきた。


つまりこの変化は『星、PV、フォロー』で作品価値を計ってきた運営が、内容を元にやりとりする文化を見直そうとする予兆なのでは?


しかし上手く行っていない。主に次の二点。


ギフト。商業作家の印税額を考えると、これを受け取れるようになる事はWebアップロードした瞬間から商業作家になれたのと同等の意味と価値を持つ。

だが良作が埋もれているせいでそこへ届かない。

やはりギフトを渡したい相手を探し易くするべきです。

その為にもエール指数の表示は有用でしょう。



もう一つは、応援コメントへのアクセス。非常にし易くなった。

一見良いように思えるがこれが大失策だ。

反応の有ったエピソードに対し、日付的に降順、つまり近い順なのです。書かれた内容が最新話に対するものも多く、その場合には『思いっきりネタバレ』になる。


これが中・長編においては余りにも致命的!


このUIになる前でさえ自分等は『ネタバレになるので内容を変えて下さい』と作者様からコメント調整依頼された事もある。


そんなコメント欄が日付降順であっていい筈がない!

きっと運営側は最新のホットなやり取りを見て欲しいと思ったのだろう。


作者がどれだけ心血を注いでストーリーラインを練っているのか。IT業者や運営だけでなく、有能な作家さんと、常識人にもテストさせるべきでしょう。

故に今回のUIでもダメで、コメント欄はアクセスしにくくかつ日付昇順に。


そして(だからこそ)応援コメントを評価対象にしたいならエール指数(仮) での数値のみの表記の方が良いのです。



次話ではエール指数と創作者とのあり方を考えます。








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その他、様々なサイトの改善案、書き手、読み手の関わり方、そして創作活動の行く末などを俯瞰し、私達がどの様な心構えで行動したら良いかを示して行きます。




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