脳死ラブコメミステリーサスペンス

イコ

脳死を題材にラベコメ書く企画

 蓮池に船を走らせ、浮かぶ月。


 道士の服に身を包んだ。


 女の胸には、男から向けられた剣が突き立てられていた


「ジャン。あなたがこの行いを悔いないようにしてね。私はあなたが大好きなの」

「ミンリ。どうして君はそこまで落ち着いていられるんだ」


 女は胸に突き立てられた剣を痛みを発することなく、口から血を流して笑顔を浮かべる。


「私は道士、いつか戦いの中で命を散らす身。ここであなたに殺されようと後悔はない」


 男の瞳からは涙が溢れ出して、女の死なせなければいけなかった自分の力無さに頬を噛み締める。


「すまない。力無き俺の弱さを」

「いいえ。あなたが悲しまないことだけを祈っています」


 女は蓮池に落ちていく。


 一年後に、女が飛び込んだ場所から綺麗な蓮の花が咲いた。


「ジャン様。ミンリ様の一周忌です。盛大にお迎えしましょう」

「ああ、そうだな」


 女が死ぬことは他の領主たちへの償いであった。

 二人は結ばれてはいけない関係でありながら結ばれてしまい。

 多くの悲しみを生み出した。


 しかし、その結果はどちらかの死を示し。

 また、もう一人は生き残って償いをするというものだった。


 男は思う。


 女を残すぐらいならば、自分が地獄の苦しみを味わい。

 誰とも添い遂げることなく彼女の元へ召されよう。


 だが、その願いは一周忌の元で覆される。


 その日の晩は満月が見える美しい日だった。

 

 一人彼女を送った蓮池で酒を飲む男。


「あら、久しぶりね。ジャン」

「はっ?」

 

 一人で乗ったはずの船に女の声がして振り返れば、頭から蓮を咲かせた女の姿がそこにあった。


「君は死んだはずだろ?!」

「ええ。死んだわ。だからこうして蓮として蘇っているじゃない」

「何を言っているんだ?」

「ふふ、そうよね。これは邪道。あなたが私のために踏み込んだ領域に私も踏み込んでしまった。もう後戻りはできない」


 男は目を閉じる。


 これは天罰なのだろうか? いや、これも彼女が望んだ未来なのだろう。


「君は死体でいいのだな」

「ええ、そうよ。体は生き返っているからしたいならできるけど?」

「どこまでも落ちていく決心ができた。我は妖仙の道を突き進むとしよう。これより進むは魔の道。道士としての我は死ぬ。君と歩み地獄を進もうぞ」


 男と女は道士の世界に反して、邪道を進む。


 

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