第7話

新たな地、その名もラパス。

後から聞いた話では、ラパスへ行った人は、当初一年滞在するだったつもりが気づいたら三年になったりだとか、三か月行くだけだったつもりが永住することになったりだとか、一度行くと帰ってくるのが難しい場所だったそうです。

そんな作用が私にも働いたのか、二週間の滞在だった予定が、一月以上滞在することになっていました。


フックピアスにも、盲点がありました。

パーツを吊り下げるための隙間があるのですが、当時髪が長かった私は、たびたびそこに髪の毛がひっかかり、ピアスが引っ張られ、そうこうしているうちに、ホールに傷がついてしまったらしく、穴から白い膿のようなものが出てくるようになってしまったのです。

そんな折、広場で行われていた薬草のイベントで物欲しげな顔をしていたのか、優しい店員さんがくれたコカの葉エキス入りのメンソレータムのようなものをくれました。ピアスの先につけてから装着してみたら、うまい具合に薬が効いたのか、膿はたちまち姿を消しました。


まもなく誕生日がきて、誕生日記念にボリビアニータという石のピアスを買って、それをつけるため、フックをはずし、ボリビアニータを装着しました。

ここで知ったのは、重めのピアスをつけたとき、後ろのキャッチャーをきっちりしめないと、ピアスの重みで針が穴から少し飛び出てしまうということでした。なるほど、だから大きな銀細工はフックがついてるんだなと納得。しかし、キャッチャーをぴっちりつけると膿みそうでトラウマになっているため、買ったばかりのボリビアニータはあっという間にお蔵入りになってしまうのでした…。

金具の付け替えをするペンチをもってくればよかったのですが、普通、持ってこないですよね…。


とはいえ、バームを手に入れて強気になった私は、毎日のようにピアスを付け替えるようになりました。寒いのでシャワーは一日おきで、下手すれば服を着替えるのも怠けてしまう中(暖房がないので、夜ごとパジャマなんかに着替えていたらその都度体温が下がって大変です)、ピアスの取り換えだけは忘れません。

「ペルーで買ったのはちょっと華やかすぎだったから、仕事中に使える地味なのも用意しないと」と言い訳しながら、小さいピアスをせっせと集め、またもやピアスは増えていくのでした。


そんな中で、私が最も心惹かれたのは、アメトリンという石でした。

ボリビアの名産品のようです。

値段も、ほかの銀細工に比べると、高めのようでした。


ボリビアにも慣れてきたある日、四組目のアメトリンピアスを買ったときのことでした。

かなり大胆に値切ってしまったせいか、売り子さんにすごく暗い顔をされてしまったこともありました。

嫌なら嫌っていってもらえればよかったのですが、ノルマがあったのか……その辺はよくわかりませんでしたが、暗い顔をされたからって、「じゃあ、もっと払うわよ」というのもなんだか気が引けて、できれば、お互い嫌な思いをしない程度の値切り方ができるといいものですが。

ペルーでは、貫禄のある売り子さんが「値切りすぎだ」とはっきり言ってくれたから気持ち良い取引ができたことを思うと、売り子さんも私も、まだまだ修行が必要なのかもしれません。


ラパスでは、地元の人(チョリータといわれる、民族衣装を着ている人たち)が好んで身に着ける大ぶりなイヤリングもたくさん売られていたのですが、金属がどんなもんだかよくわからず、何度もトラブルを起こしている私は欲しくても手が出せないのでした。

多分、日本に持って帰っても、南米関係のイベント時以外はまず使わないような華やかなものばかりでしたが、今から思えば記念に買って飾っておいてもよかったかな、という気がしないでもありません。

リャリャグアで見た、イミテーションのピアスなども、思い出に欲しかったなという気がしないでもありません。

しかし、ピアスは壁に飾るものではなく身に着けるもの。やはり、100%身に着けないだろうと確信するようなピアスは、きちんと身に着けてくれる人のために、買うのを控えておくのが礼儀なのかもしれません。


(おしまいです。お読みいただき、ありがとうございました!)

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南米でピアスを開ける 高田 朔実 @urupicha

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