死にたいのに死なせてもらえない件について

梅里遊櫃

第1話 なんで生き返ってるの

「なんで」

 アネが発したのは現実には起こり得ないことだったからだ。

 魔法王国ティースにおいて、死者の復活はほとんどの人ができないはずだった。


 なんで、そのほとんどの人ができないことで悩んでいるのかというと、昨日アネは殺されたからだ。

「どうしたのそんな顔をして」

「え?」

 優しげに近づいてくる男はコーヒーを片手にしているが、白衣を着ている。


「いや、あの、死んでましたよね私」

「ああ、僕が殺したよ。

 君の記憶は間違いない」

「じゃあ、なんで生きているの!?」

 張り上げた声は家中に響いていた。


「鬱陶しいなあ。

 俺は犯罪は嫌いなんだよ」

「私は殺してって頼んだはずよ」

「俺はティース屈指の魔法医学者だからなあ。

 そんなこと簡単にできるんだよ」

「そんなこと望んでない、殺してよ!」


 アネは怒っていた。

 自分が死んでいないことに。

「大丈夫だよ。 

 今日も殺してあげる。

 でも明日も生きてるよ」

 近づく男にアネは切れている。


「俺の名前はキール。

 君の名前は確認したけど、アネだよね」

「荷物漁ったの!?」

「俺くらいの魔法医学者からしたら、君の情報を読み取るなんてお手のものだよ」

 しれっと言うキールは、マグカップをアネにマグカップを渡す。


「そうそう、今日はどんな殺され方がいい?」

「私は死ねたらそれでいいの」

「良いよ殺してあげる」

 にっこりと笑った男は、ナイフを取り出した。

 医療用ナイフだ。

 首の頸動脈に突き刺すと、抜いて溢れ出る血をみる。

 血は壁を伝っていきアネが寝ていたはずの場所は赤の池となる。


「やっぱ楽しいなあ。

 良いおもちゃを見つけたよ」


 そう言うと、死んでいるアネに紙にかいた魔法陣を出す。

 悪魔との取引だ。

 キールは1柱の悪魔と契約している。

 大きな光と共に悪魔は言う。

「良いおもちゃでも見つかった顔だな」

「出てきてもないのによくみれたね」

「お前ずっと、殺せる相手探してたじゃないか」

「そうだよ。 だから良いおもちゃだ」

 

 悪魔はニヤリと笑って言う。

「俺はずっとお前にいらねえ人間の命もらってきたからな。

 もらった分くらい返してやるよ」

「犯罪だけはしたくないからな。

 いつも助かるよ」


 悪魔はアネに手を添えると、血の池が全てアネに戻っていく。

「昨日と同じで今日はぐっすりだろう。

 お前は俺のために研究でもしていてくれ」


 アナーキーな学者で有名でもあるキールは犯罪者の治療をよくしている。

 新作のポーションなどの実験を使うときなどによく利用していて、悪魔にその後、その人間の寿命を上としていたのだ。

 その場合、自然死となる。

 キールはその場から離れ、仕事場へと向かうが、アネの足には鎖がついていたことにまだ、アネは気づいていない。



「また!?」

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