報酬増し増しでした

 冒険者ギルドのギルドマスターの部屋、今回の一件について報告をしにヒイロ達はここへ来た。

 机に着いているギルドマスターは黙って私の話に耳を傾ける。


「まずは、魔物の大量発生に関してはこの魔道具が原因と思われます。魔法に長けた私達の仲間のリネルが調査を行った所、通常の魔力とは異なる力が働いていると言っていました」


 ヒイロは祭壇に立てられていた杖と槍を合わせたような黄金色の魔道具をギルドマスターの机に置いた。

 ギルドマスターはその魔道具をまじまじと見つめ眉を顰めた。


「これは、どこかで見たような気がするな。後で調べておこう」

「よろしくお願いします。それと白衣の男が祭壇でこの少女に何かをしようとしていました」


 そうして私の横に立っていた少女に視線を向ける。

 ギルドマスターは少女を見ると顎に手を当て悩み始める。


「君、名前は?」

「……リリコ」


 少女はギルドマスターを怖がる様な表情で見ながら、私の服を掴んでいる。

 するとギルドマスターは困ったように頭を掻いて苦笑いを浮かべた。


「この子にその白衣の男は何をしようとしていたのか分かるかな?」

「生贄にしてドラゴンに何かしようとしていましたが、具体的にどのような事をしようとしていたのかは不明です」

「その男はどうなった?」

「その後に現れたレイルと名乗った男によって連れ去られました。その男の纏うオーラだけで私達の実力では敵わない相手だったと感じました」


 するとギルドマスターは目を見開いて突如席を立った。

 何か心当たりがあるのだろうか。そう思ったが、私達に気配を気取られる事もなくその場に居た男。それはきっとかなりの実力を持つ者なのだろう。ギルドマスターである人物が知っていてもおかしくはないだろう。


「その男はここ数年でかなり勢力を増している犯罪組織の幹部だな。何を目的としているのかは分からない。分かっている事は盗賊等を下っ端に使っている事くらいしか……とにかく謎の多い組織なんだ」


 ギルドマスターがそう言って俯き息を漏らす。きっとその組織には相当悩まされているのだろう。

 その組織に利用されようとしていたリリコは一体何者なのか、謎の多い組織が利用しようとするならそれなりの理由があるのか。

 するとギルドマスターは再びリリコの方へと視線を向ける。

 

「リリコちゃんは一旦ギルドで預かろう。身元も調べないとならないからな」


 私がリリコの方へと視線を向けるとリリコと目が合う。するとリリコはとてとてと走ってリネルの背に隠れるように後ろに回った。

 

「リリコちゃんはお家に帰りたくないの?」


 そうリネルが問うとリリコは首を横に振る。

 すると次はマトイがしゃがんでリリコと目線を合わせ言う。

 

「リリコちゃんは私達と一緒に居たいんだよねー?」


 その言葉にリリコはこくこくと首肯する。

 それを聞いた私とギルドマスターは困り顔でお互い見合う。

 リリコが帰りたくないというのにはきっと理由がある筈だ。無理にギルドに押し付けるのも良くはないと思うし、どうやら自分を救ってくれたリネルの事を慕っているようにも見える。


「では、リリコちゃんは暫く私達が預かる事にしましょう。一応身元の調査だけはお願いできますか?」

「うむ。仕方がない。危険な目に遭って、救ってくれた人からすぐに引き剥がそうとするのも良くはないな。他に報告はあるかな?」


 私は首を横に振りもう伝えられる事が無いと答える。


「そうか、まだ件の組織については分からない事が多いがこれだけ大々的な動きを見せたんだ。こちらも本格的に動かなければならないな。何か方法を掴めたらまたギルドへ寄ってくれ」

「分かりました。それでは」


 私達は頭を下げて部屋を出ようとした。するとギルドマスターが思い出したように口を開く。


「あーそうそう。今回の事件に関してゴールドランクの冒険者ですら対応に悩まされるような事だったんだ。それを解決してくれた君達の実力を見込んで四人共プラチナランクに更新しておくから帰る時にカウンターに寄ってくれ」


 それを聞いた私達は丁重にお礼を言って部屋を後にした。



――――――――



 ギルドで今回達成した依頼、その報酬は危険なものだが調査のみと言う事で銀貨10枚だったのだが、魔物の掃討とその原因らしきものの解決した事で白金貨200枚(数年食べて行ける程)を報酬として支払われた。

 それはもう私達は困惑の嵐に襲われたのだ、手渡された時はまずリリコを除いた四人は変な声を発した。その直後、私達は手をワタワタさせてこれ程の金額は受け取れないと断ったのだが、受付の女性が受け取って貰わなければ私も困ると押し付け合いのような時間が暫く続いた。

 結果私達はその押しつけ合いに負けて白金貨200枚を受け取った。


 そしてギルドを出た時だった。


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」


 喝采が上がった……。

 え?何で?どうしてこんな人だかりが出来てるの?しかもこの歓声、訳が分からない。

 白金貨に続いてのこの歓声、困惑の嵐は未だ過ぎ去ってはくれないようであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親友を裏切ってしまった村娘は、親友を助け出すついでに世界最強になってしまいます コンタロ @Contaro39

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ