オストポリへの帰還。そして奇跡の再開!?

 あれから私達は祭壇へ置いてあった魔道具らしきものを取り外し、その途端目を覚ました少女を引き連れてオストポリへ戻ってきていた。


 帰りはダンジョンの異変に急遽送り込まれたオストポリを拠点とする傭兵団に遭遇し、馬車に乗せてもらった事でそれ程時間もかかる事なく帰ることが出来た。


 今はオストポリでは治療魔法に長けた人間が1箇所に集められており、負傷した冒険者等はそこで治療を受けているらしく、私達もそこへ連れていってもらう事にした。


 しかしその場に着くとどれだけの規模の事態だったのかは容易に想像が着く。ダンジョンへ居た冒険者や、オストポリへの魔物の侵入を防ぐ為に動いていた者達があちこちで腰を下ろし治療を受けている。


「うわぁ。相当な被害だね」


 足を引きずりながらマトイは呑気にそんな事を言う。

 どちらかと言えばこの中でもマトイは重症な方だと思うのだけど、この子は痛覚に異常でもあるのらしら。


  そんな事を重いながら治療魔法が使える人を呼びに行った、私達を馬車に乗せてくれた男性を待つ。

 どうやら私達はこの騒動の原因を解決した人物として、治療を優先的に受ける事が出来るらしい。


 そして暫く待っていると男性が1人の女性を連れてきた。やっとこの痛みから解放されるのだと安堵した時、ふと私達と一緒に座っていたリネルが立ち上がる。


「お母様!?」

「「「は!?」」」


 リネルの言葉に私達はその女性とリネルの顔を行ったり来たりする。

 確かに似ている。本当にこの2人は親子なのか、しかし1つ疑問も残る。それはその女性が圧倒的に女性らしさというか、そのボインに目が行く。そしてリネルのボインが……ない。本当に親子なのだろうか。


 しかし困惑の表情を作っている私達を置いて2人は感動の再開である。たった数週間ではあるが、大好きな母親と大好きな娘にとっては永遠と言っても過言では無い程に長いのだろう。


「あの……治療を――」

「お母さんリネルの事すっごい探したんだから」

「僕もお母様にずっと会いたかったです!急に家を飛び出してしまって申し訳ありません」


 もはや二人には私達の事は見えていないようだ。どう話を切り出すべきか。そう考えている時にルミアが口を開く。


「早く治療しなさいよ!」

 

 するとリネルのお母さんは即座に反応する。


「おばっ!?」


 リネルのお母さんは怒りに任せこちらへ拳を振り上げてくる。


「ちょ、落ち着いてください!」


 男性はリネルのお母さんを羽交い絞めにして抑えるが怒りは収まりそうにない。

 そんな時にリネルが救いの手を差し伸べてくれた。


「お母様!この方達は私の恩人なのです!どうか落ち着いて!」


 その言葉を聞いたリネルのお母さんは風船の空気が抜けたようにその怒りが萎んでいく。リネルの一言で落ち着きを取り戻すとはそれだけリネルの事を愛し、信用しているのだろう。


「コホン、失礼。改めて自己紹介を。私はリネルの母でリリア・パナプルと申します。あ、でも旦那とは既に絶縁しているから性はハタータかしら?」

「それではリリアさんとお呼びしても?」


 私の問いにリリアさんは首肯で答えてくれた。


「そんな事より早く治療しなきゃね。その生意気な小娘は最後ね」


 ルミアに対して敵意剥き出しでリリアはそう言い睨みつける。しかしルミアも負けじとそれを睨み返した。

 二人の関係はある程度解消しておかないと、リネルとは今後も仲良くしていきたいし困ったものだわ。


 そうこうしていると私、マトイ、ルミア、そして無言で私達の後ろで立っていた謎の少女の順で治療魔法を施してくれた。暫くはこの痛みと共にオストポリで生活する事になりそうだったが、これは流石リネルの母と言った所だろう。リリアの治療魔法一つで三人共完治したのだ。


「この魔法は絶対に覚えなきゃだめね」

「フフ、私の魔法が褒められたみたいで嬉しいわ。それよりも4人はギルドに今回の事を報告しに行かなきゃいけないんじゃない?」

「そうですね、それではリネルも早くリリアさんに会いたいでしょうし、報告が終わり次第合流しましょう」

「そうね、皆で食事でも取りましょう」


 リリアは両手を合わせそれをとても楽しみと言った様子である。

 最後に私達は改めてお礼を告げてから冒険者ギルドへ向かった。


 そして私達が冒険者ギルドに入るなり、以前私達に対応してくれた女性がこちらへ駆け寄ってきた。


「皆さん!よくぞご無事で」


 以前のような事務的な態度ではなく本当に私達の身を案じていたかのような態度である。


「あの、報告をしに来ました」

「承知しております!ささ、奥へどうぞ」


 そうして二階のとある部屋へ通される。

 扉を開くとそこには正面にある大きな机に腰かけている男性が居た。


「マスター、今回の一件を解決した冒険者をお連れ致しました」

「ああ、ありがとう」


 マスターと呼ばれた男は腰を上げ私達に一礼をした。


「私はこの冒険者ギルドのギルドマスターをしています。ハルトと申します」

「ご丁寧にありがとう御座います。私はヒイロと申します。レポートの作成をしている余裕が無かったので口頭での報告をお許し下さい」

「こんな事態だ、構わないよ」


 そしてギルドマスターは再び椅子に腰を掛けた。


「それではよろしく頼む」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る