二日遅れのメリークリスマス

 加奈子という名の息子のクラスメイトが死んだことは、新聞で知った。聖なる夜の悲劇としてメディアに取り上げられていた。


 息子の顔は沈んでいたように見えた。

 ――クラスメイトが死んだのだから、当然か。


 私は、息子とテーブルを挟んで向かい合っている。テーブルの上には、ローストチキンに、ピザに、シチューに、ポテトサラダ。ケーキもある。

 こんなときに不謹慎だとは分かってるけど、頼んでおいた料理を今更キャンセルもできず、予定通り二日遅れでクリスマスを祝っていた。


 タイミング悪く私が出張になってしまって、今日――二十七日の昼に帰宅した。

 せっかく土日に重なったクリスマスをリアルタイムで一緒に過ごせなかったばかりに、暗いパーティになってしまったのが申し訳ない。


 私は息子のグラスにシャンメリーを注ぐ。


「友達があんなことになって、食欲ないかもしれないけど。ちゃんと食べて、供養してあげようね」


 息子は顔を上げて微笑んだ。無理して笑っているようで、見ていて苦しい。


「僕なら、大丈夫。サンタさんはいたみたいだから」


 最後の言葉は、外の野良猫がケンカを始めた声に打ち消されて聞こえなかった。


 私もできるだけ明るく微笑んで、グラスを掲げ、二人だけの、二日遅れのクリスマスパーティを始めた。


「メリークリスマス」


 甘ったるい炭酸が喉を流れた直後、私のスマートフォンが光り、チャットアプリの着信を知らせる。アプリを立ち上げて、メッセージを確認する。


『残り三人はどうしますか』


 私は親指を動かして、短く返答する。


『消して』


 スマートフォンを置いて、息子に料理を取り分ける。

 ――心配しないで。私は、この命に代えてもあなたを守るから。

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二日遅れのメリークリスマス 篠塚しおん @noveluser_shion

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