二日遅れのメリークリスマス

篠塚しおん

クリスマス

 娘の加奈子かなこが死んだのは、粉雪が舞うクリスマスだった。

 土曜日だった二十四日、ボーイフレンドとのデートの帰り道に交通事故に遭った。わずか十六年の娘の人生は、急に、そしてあっけなく幕を閉じてしまった。


 娘を轢いた男は、休日出勤の挙句に運悪く残業になってしまい、小学生の息子のクリスマスプレゼントを買うために、もうすぐ閉店してしまう家電量販店に向かって車を走らせていたのだという。


 報せを受けて向かった病院には、亡骸となった娘がいた。日付が変わり、二十五日になった病院で、雪のように白くなった娘が眠っていた。

 私は何も考えられなくなり、周りからは音が消え、景色が消え、すべての感覚がどこか遠くへ旅立ってしまった。


 その後のことは、よく覚えていない。気づいたらすべてが終わっていた。成長したはずの娘は、生まれたときより小さい箱の中に閉じ込められてしまった。ロウソクの炎と、線香の煙が揺れていた。

 笑っているのに、笑いかけてはくれない娘の写真が飾られていた。


 抜け殻のようになった私の人生は、早送りをした録画のように、意味をなさない音と映像の世界に飲まれて流れていった。

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