第2話「うしお◯とら」

 小学生の頃、一年生と二年生の時に同じクラスだったワタシと昆布。

 ワタシの方はこの時点で彼女のことを大変好ましく思っていたのだが、世の中そう上手くはいかない。


 彼女も初恋がワタシ、などということは全くなかったそうな。そうだろうと思う。


 しかしワタシは愛されるより愛したい。マジで。

 だからまぁ、全然平気だ。マジで。ホントだもん。


 中2で再び同じクラスになれた時は喜んだものだ。


 もちろん小1からずっと彼女ひと筋な訳ではないが、同じクラスになれば毎日顔を合わす様になる、するとすぐにまた彼女に夢中だ。



 昆布は割りと鋭い感じの、吊り目ぎみなまなこをしていた。

 やや老けた今と較べれば、はっきりと吊り目だった当時、笑うと糸目になるのが大層可愛く見惚れたものだ。

 もちろん今の彼女の笑顔も最高に素敵だと付け加えよう。


 ただし当時それほど接点はない。

 お互いにいちクラスメイトであり、特別な感情は残念ながらワタシにしかない。


 そんな昆布との忘れられないエピソードがある。


 友人の付き合いで行ったアニメイトで購入した『うしお◯とら』のシャーペンの具合がなんだか悪く、ワタシはこっそり授業中にバラして修復を試みていた。


 構造はいたってシンプルな、筒の中にペン軸、さらにバネ。


 何が悪いのかよく分からぬままに、にょーん、と引っ張ったらビョンと中身が――


 あたかも『獣◯槍』の如く飛び――


 ワタシの席の左の列、二つ前の席に座る昆布の首にぶち当たる――


 かなりの驚きと痛みとがあったと思われる。

 こちらを見て、キッ! と睨む昆布の吊り目が忘れられぬ。思い出してもゾクゾクする。


 授業中ゆえ身振り手振りで謝意を伝えて赦されはした。

 当時のワタシと昆布の数少ない大きなエピソードだ。


 なれど。


 残念ながらこのエピソードすら彼女の記憶にはないそうだ。

 どんだけワタシに興味がなかったか知れようというもの。


 このエッセイ(?)を書くにあたり、彼女に当時のワタシの印象を伺った。


『泳ぐの下手やなー、と思った記憶はある』


 ロクでもない。



 さて、次回は一気に飛んで社会人編だ。

 特に思いの丈をぶちまける事もなく卒業し、再会を果たすのは十年以上先となるのでこればっかりはしょうがない。

 書くこと全くないもん。

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