第39話 新エース
男子の前半が終了し、10分間のインターバルに入った。
インターバルの時間は、女子バスケ部の部員がアップを始める。
俺たちは全員が持ち場を離れてコートに集まった。
そして、ドリブルシュートと2対1、そして二人一組のパス練習を行って10分間の練習を終える。
試合が近づくにつれて、みんなの表情が引き締まっているのを感じた。
静かを除いてだが……。
まあ、試合になったら復活してくれるだろう。
◇
10分のインターバルを終えて、男子の練習試合は後半の第三クォーターへ。
第三クォーター、川見高校は選手交代を行った。
一年生のルーキーであるセンターの
身長は186センチあり、身体の線は細いものの、空中戦はめっぽう強い期待の一年生ルーキー。
さっそく国吉君がボールを受ける。
高身長にもかかわらず、国吉君は外のシュートも得意とするため、早速挨拶代わりのスリーポイントを放つった。
相手もシュートブロックを試みるが、打点の高い位置から放たれたシュートは見事ゴールへと突き刺る。
「おぉ、すげぇ」
俺が感心しているのもつかの間、今後は高橋先輩がパスカットをすると、一気に速攻へと移る。
ドリブルでゴール前まで運んでいきラストパス。
受け取ったのは国吉君だ。
国吉君は相手を上手くかわしながら、きれいなレイアップシュートを決めて見せる。
すると、笛が鳴り相手のファールを審判がとった。
得点が認められた上でさらにもう一本フリースローを貰えるバスケットカウント。
そのフリースローを、国吉君が確実に決め、一気に六点を決めて見せる活躍。
その後も、川見高校の攻撃は国吉君を中心にテンポよく進み、浮島高校はシュート精度が落ちてくる。
その外れたボールを、筒香先輩と国吉君がしっかりと確保して高橋先輩にパス、ドリブルを開始して速攻を繰り返す。
また国吉君にボールが回ってきた。国吉君はシュートフェイクを一本入れると、引っかかった相手をドリブルで抜き去り、ゴール前へ一直線に向かっていく。
国吉君を相手が二人がかりで止めに入るも、国吉君は勝負を仕掛けずにノーマークになっていた筒香先輩へ横パスを供給。
筒香先輩は豪快にゴールをたたき込み、川見は得点を重ねていく。
後半開始で十五点差あった点差もあっという間に追いつき、第四クォーターが始まる頃には55対55の同点に追いついていた。
第四クォーターに入っても国吉君の攻撃がさえわたる。
何度も相手を抜き去り、ゴール前へとドリブルで進入していく。
ついに、しびれを切らした相手の四番上田君がヘルプに入り、国吉君を止めにかかる。
しかし、こうなってしまえばもう勝負ありだ。
国吉君は上田君が本来マークしていなければならない相手にパスを送る。
黒いヘアバンドに汗をにじませたその男は、待ってましたといわんばかりに――
「ナイスパス!」
と爽やかな笑みを浮かべた。
ノーマークでパスを受け取った航一は、すっと宙を舞い、スリーポイントシュートをいとも簡単に決めて見せる。
こうして、国吉君が入って攻撃が活性化した川見高校は、さらに得点を重ねた。
そしてついに、試合終了のホイッスルが鳴り響く。
98対68と、気づけば逆に30点差を付けての快勝を収めていた。
インターハイでも、国吉君が攻撃の中心となっていくのだろう。
今日の試合を観て確認した。
もう俺と航一のコンビを中心に攻撃するあの頃の川見の姿はなく、新しいチームへと生まれ変わろうとしている。
そんな俺がいない男子バスケ部の変化に感慨深い気持ちになりつつも、俺はすぐさま気を引き締めた。
「さてと……次は女子チームの出番ですかね」
まもなく、合同女子バスケ部チーム初の練習試合が幕を開ける。
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