第34話 立ち塞がる対戦相手の前夜

 夜、私は練習着やユニフォームなどをエナメルバッグの中に詰め込んでいた。


 明日は練習試合、対戦相手は、川見・城鶴高校の合同チームとのこと。

 合同チームでは、あまり実力がないのではと考えてしまう。

 どうやら、男子バスケ部のおこぼれで練習試合を貰ったとのこと。

 コーチからは50点差以上での勝利をノルマとして課されている。

 もちろん、どんなチームが相手であろうと、勝利を求めていつも通りのプレーをするだけ。


 それよりも、私には明日自分のプレーを見せたい相手がいた。

 川見高校男子バスケットボール部に所属しているお兄ちゃん。

 あれから見ていないけど、元気にしているだろうか?


 インターハイ予選決勝、お兄ちゃんは第四クォーター残り一分という所で怪我をしてしまった。

 観客席から見ていた当時の私は、驚きを隠せなかったのを覚えている。

 唯一覚えているのは、航一君がスリーポイントシュートを決めて、川見高校が逆転でインターハイ出場を決めたということだけ。

 頭が真っ白になって、それ以外あの日の記憶はあまりない。

 あの日以来、お兄ちゃんの顔を見ることになる。

 お兄ちゃんは怪我でプレーできないだろうけど、一言でいいからおしゃべりしたい。向こうが覚えてなくてもいいから、あの時のように変わらない優しいお兄ちゃんを見たいな……。

 そんなことを思いながら、私は寝る支度を整えて、明日の試合に向けて万全のコンディションを整えるため、部屋の明かりを消して寝る態勢に入った。



 ◇◇◇



「静……」


 夜、私は過去の仲間である彼女の名前を口にする。

 城鶴高校で絶対的エースだった彼女。

 そんな彼女と、今度は敵チームとして対戦することになるなんて……。

 城鶴にいた頃は、静が圧倒的存在過ぎて、私みたいなプレイヤーはただのお飾り。

 けれど、城鶴を出て浮島高校に転入してから、私は水を得た魚のように躍動し始めた。

 私のバスケ人生が始まった瞬間だと確信したのを今でも昨日のことのように覚えている。

 だからこそ、私が今までやってたことが間違っていないことを証明するためにも、絶対に倒さなければならない相手がいるのだ。


「アンタが相棒を待ってて怠けてる間、私は変わったんだから。明日は絶対にアンタを倒して見せる。北条静!」


 そう言って、私は静に宣戦布告をするのであった。

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