第31話 練習試合のお誘い
インターハイにアシスタントコーチとして帯同することが決まり、俺は体育間の脇にある準備室で相沢さんと向かい合って座っていた。
「本当にありがとうございます」
「いいっていいって。バスケ未経験の先生に入って貰うより、バスケに精通してる人がいてくれた方が、僕としても心強いからね」
「でも、そんな大層なことは出来ませんよ」
「分かってるよ。ただ、大樹は今まで選手としてやってきたんだ。彼らの特徴の生かし方を選手目線から一番分かっているはずだ。僕はそこに期待しているよ」
「ありがとうございます……」
「まあとはいえ、インターハイから男子バスケ部には合流すればいい。今君の一番の仕事は、女子バスケ部のコーチなんだから」
「何から何まですいません」
本当に相沢さんには感謝するにもしきれない。
それほどに、恩があり過ぎる。
「それでだ。大樹に伝えたいことがあるんだが……」
「はい、なんでしょう?」
「インターハイ前に
「練習試合ですか⁉ しかもあの浮島高校ですか⁉」
浮島高校は、県内でも名を知らない者はいない有名高校であり、スポーツも盛んで、サッカーや野球などでは全国出場を何度も繰り返している強豪校。
バスケももちろん、過去にはインターハイ出場経験がある実力校。
今回は男子バスケ部も女子バスケ部もあと一歩届かない所だったが、練習試合の相手にしては十分すぎるほどの高校だ。
「それでどうする? この練習試合の話、受けるかい?」
「もちろんです! 彼女達のモチベーションにもつながりますから!」
俺は梨世たちの意見を聞かずに即答した。
とはいえ、練習試合を彼女たちに判断を委ねるは違う気がする。
練習内容を考えるのはもちろんのこと、練習試合の日程を調整したり組んだりしてあげるのもコーチの役目だと思っていた。
「それじゃ、向こうの方に女子バスケ部の練習試合も申し込んでおくよ」
「ありがとうございます!」
俺は頭を下げて感謝の言葉を口にする。
全国出場を目指すのであれば、浮島高校を倒さなくてはいけない壁である。
彼女達の実力が今どれぐらいの立ち位置なのかを確認するためのいい機会でもあると考えていた。
そして何より、俺もコーチとして初めて彼女たちの指揮を執ることとなる。
今まで培ってきた知識を生かして、どれだけ通用できるのか、それもまた楽しみで仕方がなかった。
俺の心の中では、やってやるぞというメラメラとした闘争心が沸き上がるのであった。
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