第20話 城鶴高校
翌日、俺たちは四人で城鶴高校へ足を運んでいた。
城鶴高校、地元では有名な県立高校である。
区の中心部からバスで十分ほどの距離にあり、アクセスが良いとは言えないものの、区外から通っている生徒も多いと聞く。
俺たちは校舎の入り口で来場手続きを済ませ、来校者のスリッパに履き替える。
来校者用のスリッパって幅広じゃないから足が入らないんだよな……。
スリッパが何度も脱げそうになりながら、体育館へと続く廊下を進んでいく。
体育館と校舎を繋ぐ連絡通路で、一人の中年男性が出迎えてくれた。
「どうも初めまして、暑い中お越しくださりありがとうございます。私は、城鶴高校バスケ部顧問の
丁寧な口調で自己紹介をしてきてくれたのは、城鶴高校バスケットボール部顧問の古田さん。
事前に俺達が尋ねることは、相沢さんに連絡済みである。
古田さんも、第一印象はとても優しい印象を受けた。
「初めまして、川見高校女子バスケットボール部コーチの
「いえいえ、どんでもない」
古田さんは腰を低くしながら首を左右に振る。
「そして、こちらがうちの女子部員です」
「初めまして、
梨世はペコリと頭を下げる。
「君が佐倉さんだね、静から噂はかねがね聞いているよ」
「はい、そうですか……」
古田さんも悪意があって言っているわけではないのだろうが、梨世の頬は引きつっていた。
倉田とティアもそれぞれ自己紹介を終えて、さっそく古田さんに先導してもらい、体育館へと向かっていく。
「うちの女子部員は基本的に男子と同じタイミングで練習をしています。ただどうしても、ゲーム形式の練習になると、隅っこで見学することしか出来ません。男子と同じコートに立たせるのは厳しい子が大半ですから。それで、今回のお話を提案した形です」
「なるほど」
古田さんから女子バスケ部の現状を話してくれた。
どうやら状況は川見と大差ない様子。
「ここが
そう言って、体育館の入り口へと案内してくれた。
体育館の中へ視線を向ければ、男子バスケットボール部が練習を行っている。
城鶴高校の体育館は、バスケットコート二面を作れるほどの大きさで、正面の入り口から向かって左側がバスケ部、右側ではバレー部が練習を行っていた。
バスケ部は今、ちょうど五対五のゲーム形式の練習を行っているようで、男子部員がコート内を縦横無尽に動き回っている。
練習の邪魔にならないよう、古田さんと一緒にコートの端を通っていき、体育館のステージの上でパス練習を行っている女子部員の元へと向かった。
「
二人の女子部員の名前を古田さんが呼ぶと、ステージ上でパス練習を行っていた二人が、駆け足で舞台袖へとやってきた。
一人は白のシャツに緑のズボン当練習着を身に付けた、黒髪をお団子に結んでいる女の子。
身長170センチほどあるだろうか。
すらりとしたボディーラインに、練習着越しからでも分かる大きく育った胸元がこれでもかと強調されている。
もう一人は、ショートカットの髪を揺らして、いかにもスポーツマンらしい様相をしている。
小柄な体型で、身長は150センチにも満たないのではないだろうか?
「彼女たちが、我校の女子バスケ部員です」
「初めまして、
まず、お団子美少女が自己紹介をしてくれた。
名前は亜美というらしい。
亜美は洗礼された所作で自己紹介をして、律儀にお辞儀をしてくる。
それだけで、育ちの良さを感じられた。
「同じく1年。!
もう一人のスポーツマン少女は、はきはきとした口調で自己紹介をしてにっと笑顔を浮かべている。
こちらは快活さが滲み出ており、元気がよさそうだ。
「黒須さんに、小林さんね。俺は川見高校女子バスケ部コーチの瀬戸大樹です。よろしくお願いします」
俺も続いて自己紹介をする。
「初めまして瀬戸さん、噂はかねがね静から聞いています」
黒須さんが俺に向かってそう答えた。
噂とはなんの噂であろうか?
少々心配だけど、一旦そのことは置いといて……。
「今日は、合同チーム結成に関しての話がしたいと思った窺ったんだ」
「はい、話は聞いております」
「単刀直入に聞いちゃうけど、二人の率直な感想を教えてほしいんだけど、合同チームを組む件に関してどう思う?」
俺が尋ねると、二人は目を合わせてから先に黒須さんが声を上げた。
「私は是非お願いしたいと思っております」
丁寧な口調で賛同の意を示す黒須さん。
「私も大歓迎だよ! むしろ私たちの方が足を引っ張っちゃいそうだし!」
そう言って、能天気な様子であっさり了承する小林さん。
どうやら二人は、合同チームを組むことに異論はない様子。
「それから、私たちのことはもっとフランクに呼んでいただいて構いませんよ」
「そうか? なら亜美と柚って呼ばせてもらうよ」
「はい!」
初対面で緊張したものの、無事に二人から打ち解けてくれてほっとする。
だが、肝心の人物が見当たらない。
「そう言えば、静はどこにいるんだ?」
「静先輩はあちらです」
亜美が視線を向けた方へ視線を向けると、そこには目を疑うような光景が広がっていた。
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