1-02b話:レンデンス誕生2
――その頃。
側室であるティファレの暮らす後宮では……。
「ねえ、陛下。リュンヌさまのお子はお生れになったの?」
「ああ。ティファレよりも早くな」
ティファレの元へと熱心に通う国王エラムディルフィンが、出産を控えていた彼女を励ましていた。
偶然にも、王妃と側室の出産日は非常に近かった。
「そう、喜ばしいことですわ。でも……」
「どうかしたか?」
彼女はオレンジ色の瞳を潤ませて言葉を詰まらせる。
「ああ、不安だわ……」
「何も案ずることはない。そなたの出産環境は万全に整えたからな。それともまだ他に、必要なものがあるか?」
「ええ……。陛下の寵愛を受けることになるこの子の命を狙う者が、いないとも限りませんわ」
ティファレは憂いを帯びた瞳を赤子の宿る腹部に向けた。
「ですから、陛下。後宮の護衛を増やしてくださらないかしら? この子が無事に産まれるように、お願いしますわ」
「なるほど、一理ある。分かった。リュンヌの宮に配置している騎士をこちらに回そう」
エラムディルフィンはティファレの言葉に頷き、早速側近を呼び寄せようとした。
そんな国王を、彼女は制止するように首を振る。
「そんな! リュンヌさまに申し訳ありませんわ! 彼女にも幼子がいらっしゃるではりませんか!」
「いいや、私とそなたの子が無事に生まれることの方が重要だ。あやつの子など、どうなっても構わぬ」
「陛下! ありがとうございます!」
笑顔で感謝を向けるティファレに満足した国王は、それから少し会話を続けてその場から立ち去った。
国王の退室を確認した彼女はそれまでの明るい表情を一転させ、近くに控えていた侍女に声を潜めて囁く。
「これでリュンヌの周辺は手薄になるわ。この隙に、あの女の子どもを攫うのよ。良いわね?」
「承知いたしました、ティファレさま」
「絶対に、失敗は許さないわ!」
侍女に悪行を命じる側室の表情は、酷く歪んでいた。
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