あたちとご主人VS私とルイ 4/4

 しょうがないから来てあげたわよ。

 あたちには重大なミッションが控えてるのだから、手早くモフってさっさと解放しなさいな。

 お寝坊しない為に早く眠らないといけないし、それに寝不足は毛並みの艶が悪くなる原因にもなって折角の美貌が台無しになってしまうでしょ。

 かまってちゃんのご主人の都合に合わせてばかりも居られないの。


 とは云っても短時間で満足させるには、お座なりにモフらせると逆効果に成りかねないからアプローチは重要ね。

 オーソドックスに頭を擦り付けてから膝の上に乗ってあげる流れで、適当に撫で回せさせれば解放されるのも早い筈。

 でもこれって気分屋のご主人に持ち上げられて、ブラブラぁ~ってされるリスクも孕んでるから諸刃の剣かも知れない。


 持ち上げられてる時に『放せぇ』ってすると放り投げられてしまう事も在るの。

 そんな時は『乱暴なのにも程が在るでしょ!』と厳重に抗議して、躾けの為にも叱ってあげないといけなくなるから困ったものね。


 色んな事を想定していてもご主人次第って未確定要素の比率は高いから、出たとこ勝負の博打と同じで、今は慎重に様子をうかがいつつ、臨機応変にあたちが主導権を握っていられる様にこの場を対処する所存よ。



 ルイは近寄って来るなり耳の辺りを擦り付け、甘えて膝に乗ろうとして来る。

 今日の日中はそんなにも寂しかったのだなぁ。

 ご飯をあげる前に予定より少し長めに遊んであげないと気が済まなくて、ずっと纏わり付いて離れようとしない気がする。


 ルイがずっと変わらずに好きな遊びの一つに、持ち上げてブランコみたいに空中浮揚するってのが在るけど、その最中に身体を捩ってしまうとタイミングが悪い場合はそのままフロアやベッドにダイブさせちゃうから、少し危ない遊び方なんだよなぁ。


 このダイブもお気に入りみたいで何度もやって欲しくてせがむから、ちょっとのつもりがついつい長くなってしまい、エスカレートして狩猟本能のスイッチが入ってしまうと傍若無人に暴れまわったりするから諸刃の剣だと感じてる。


 やはりルイも基本的には気紛れな猫なのだから、どんなタイミングでどんなスイッチが入るか分かったものじゃなくて、コントロールしながら遊ぶなんてのは無理な話しなのかも知れない。

 とにかく今は主導権を手放さず、適度に甘えたいって願望が満足するタイミングを慎重に見計らいながら、良い塩梅ってヤツを探って行くしか無さそうだ。



 ん~。そんな感じぃ。

 そうそう、頭だけじゃなく喉も撫でるの。

 好いじゃない。とっても気持ち好いわよぉ。

 それじゃもう少し頑張ってみなさいな。

 いまお腹を向けてあげるから。


 でも、膝の上はちょっと不安定だから、前脚と後脚を伸ばして身体を固定させてっと……

 背伸びも一緒に兼ねられて気持ち好さも五割増しになり一石二鳥だけど、爪は出さない様にしないといけないから理性は保って置かないと。


 ちょっ、ちょぉまってぇ……

 何か身体が浮かん行く気がするのだけどぉ!

 しまったぁ……油断したぁ!

 ご主人が大好きなぶらぶらぁ遊びに移行する気だ。


 これって最初は身体が浮いてる気がして少しの間なら楽しいのだけど、徐々にそれが不安になって来て本能で嫌々ってしちゃうのよ。

 もし、ベッドに投げたら厳重抗議よ。

 シュプレヒコールばりに輪唱ものなんだからっ!

 そして何度も繰り返すなら、今夜のあたちは強硬策に打って出て、跳ね回ったり走り回ったりのボディランゲージでアピってやるわよぉ。



 ルイは膝の上でお腹を向け手足を伸ばし、暗にブランコをリクエストして来た。

 懸念してたけど、やっぱり大好きな遊びをしたがるんだな。

 ブラブラさせてる時、変に身体を捩らないでくれれば良いのだけど。

 まぁ今回は座った状態でするからそれほど高くなくて、万一すっぽ抜けてダイブさせちゃってもケガなんかはしないだろうから少しは安心できるけど。


 でも問題はその後なんだよなぁ。

 スイッチが入っちゃうから何回もダイブさせる事になって、エスカレートさせない様にコントロールするのが難しい。

 ルイの内にも隠し持っている猫の狩猟本能は、いったん火が着くと手に負えなくなってちょっとやそっとじゃ治まらないから、ケガするリスクも上がり心配になる。

 良い運動程度の内に切り上げてしまい、ご飯をあげて興味を分散させればある程度は満足してくれるかな?

 基本は刹那的な猫なんだし、まさかの三歩も歩く前に忘れちゃってるのかも知れないから大丈夫だよな。

 良し! 今夜はこのパターンで行こう!



 突然に無重力を感じた。

 これって放り投げられてる?

 あたちは事態を察知して着地予定地点に視線を向けると同時に、反射的に身体を捻り着地態勢を整えたわ。


 シュタッ!

 出来る駄猫なあたちは華麗にフロアへ着地して、即時の行動が吉とばかり厳重抗議の姿勢を露わに、主人へ向かい尻尾を立て威風堂々とゆっくり歩み寄る。

『乱暴すぎるのはダメでしょ!』

 しかしご主人は満面の笑みをたたえ反省の色を見せない。

 更に。

『あたちだから事なきを得てるけど、他所の駄猫ならケガをしていてもおかしくないのよっ!』

 と、あたちが云い終わるや否やまた持ち上げられて、今度はベッド目掛けて空中に放り出されるぅぅぅ。

 これは実力行使の徹底抗戦しか反省させる術は無いわっ!

 この駄人間めぇ!



 あっ……ルイのスイッチが入っちゃった。

 これは最も懸念してた悪いパターンになってしまった。

 不味い……

 何とか他に興味を移さないといけないから、ご飯を前倒しで用意してネコ缶を多めで宥めてみよう。

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陽だまりのにゃんこ ~モフるのはご褒美にゃんだからっ~ 七兎参ゆき @7to3yuki

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