あたちとご主人VS私とルイ 3/4

 おいでぇ~じゃないっ!

 まぁ、可愛いあたちと遊びたいって気持ちは分かるから行ってあげるけどね。

 その代わり……

 

 少しだけ遊んであげるから早く例のブツを出しなさいなっ。

 もし忘れてたら今日は一緒にベットで寝てあげないンだからねっ!


 そう。お仕事の放棄よ! ストライキを決行してやるっ。

 ついでに明日の朝の目覚まし業務は爪出しの刑!

 そうよ。お布団バリバリしてお腹の上でぴょんぴょん跳ねて最高の目覚ましで一日を始めさせてあげるわよ。

 覚悟しなさい。


 まったくご主人ときたら、偶にこんな風に強硬手段に出ないとすぐに主従関係を勘違いするのだから、嫌になってしまうわね。

 念の為にもう少しオプションを追加しても良いかも?

 他に何か在るかしら?

 メインディッシュはお布団バリバリとお腹でぴょんぴょんだから……

 付け加えられるプランは、顔に肉球スタンプくらいかしらねぇ。

 あたちだって鬼じゃないのだから、この程度で勘弁してあげないと可哀そうじゃない?


 ふっふっふっ

 今から明日の朝が楽しみになって来たわね。

 そうと決まれば今夜は早く寝ないとあたちが寝坊しちゃうじゃない。

 ご主人があたちより早く起きてしまったらこの計画が台無しになる。

 もう少しプランを練って完璧なオペレーションにするのも良いけど、決行の支障になるならそれは本末転倒と云うもので無用の長物なのだ。


 えっとぉ……

 にゃんか忘れてる気がするのだけど、にゃんだったかしら?

 そうそう、ご主人が呼んでるから遊んであげるのだったわね。

 存分にあたちを堪能して悶絶するが良いわ。



 何やら視線を彷徨わせて心ここに非ずって感じなルイ。

 小さな虫でも飛んでいて気になってるのかな?

 こう云う刹那的で気紛れな行動原理は眺めてると可愛いけど、振り回されてる感が在るのも事実。

 気侭なのもチャームポイントの一つとして尊重し寛容で居ることが、同居生活をする上で何よりも重要な事だと改めて思う。

 次にどんな事をするのか予想できない突飛な行動を見てるのも、癒しになってるからこれはこれで面白い。

 少し遊んであげてからネコ缶のご飯を食べさせてあげれば、ルイもきっと満足するだろう。


 日中は寂しい思いをさせてしまったみたいだから、久し振りにご褒美としてマタタビをあげるのも良いかな。

 でもご飯の後じゃないと夢中になって食べてくれないから、デザート的にしなければ。

 この順番を間違えてはいけない。

 それにマタタビに夢中になれば遊んであげられない気まずさも薄らいでお風呂に入って来られるから一石二鳥ってもんだし。

 取り敢えずの流れはこんな感じで行こう。


 甘やかしてる様だけど、ルイを優先していつも自分の食事は一番最後になってしまうのは仕方のない事で、お風呂に入ってサッパリしてからの方が寛げてゆったりした気分になれるからルーティンになってる。


 おや? ルイが近づいて来る。

 気になってた虫はもう飽きたのかな?

 一旦スイッチが入ると跳んだり跳ねたりと走り回って、傍若無人な様相を呈するルイだけどオンオフの基準はいったい何なのだろう?

 毎日遊んであげてもサッパリ理解出来ないから不思議だ。

 色んな事に興味を持って好奇心旺盛だけど大概の場合長続きしない。

 インパクトの在る別件が起こるとすぐに興味が削がれてスイッチが切り替わってしまう。


 例えば、テレビで何か動くシーンに眼を輝かせたり、インターフォンが鳴るとか、瞬間的に刺激的な効果音が鳴ったりすると反応してる。

 普通に在る特別でも何でもない事なのに、驚いたり異常な程に執着したりするのは習性なのだろうか?


 これって前にも同じ反応してたなぁ。

 なんて思う事も多々あるから、きっと学習しないのだろう。

 それって生物としてどうなのよ? 少し心配になるのだが……

 それはさて置きまずは頭から順にモフってあげよう。


 短毛種でやや華奢な身体つきだけど、しなやかなルイは色んな意味で触り心地が良くて、ついつい過剰になってしまう事が在る。

 そんな時は嫌がって距離を取る為に俊敏に逃げて行くのはお約束。

 静止状態からのスピーディな動きは流石で、やっぱり猫って凄いって感心してしまう。


 その後は様子を窺う様に遠巻きに伏せてまるで獲物を狙ってる猛獣の如くじっとこちらを観察してる。

 決して隠れるのでは無く、腕を伸ばしても届かない範囲の比較的近い位置関係に居るから、警戒はしてるけど絶対的にNOでは無いみたい。

 だからルイ的には「ちょっと嫌」くらいなのだろう。


 この辺の境界線はとても曖昧で「まだ撫でてて良いの?」と感じる長時間でも全然平気で寧ろ喜んでる時も在れば、自分的には少し撫でたくらいで警戒モードに移行する事も在って、人で云う「気分屋」なのであろうと割り切っている。

 興味を惹かれる何かが在ればすぐに忘れてしまうから、きっと些細な事なのだろうけど。

 さてさて、今夜のルイお嬢様は、どんな気分でどんな遊びをご所望なのかな?



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