世界の宴

 インド繋がりのエピソード2。


 バックパック1つでぐるり周遊。全行程、列車で旅をしようと目論んでいた私。諸事情により断念しましたが、列車に乗る体験は出来ました。


 遅れるのが当たり前な鉄道事情。やっと来た寝台列車に乗り込んだのはいいものの、一緒に行った連れが腹痛で寝込んでいます。話し相手もなく、本を読むのにも飽きて暇です。

 深夜、カーテンで4つに仕切られた客室で、誰かが話しています。私は好奇心に駆られ隙間から外を覗きました。


 すると、4人の外国人がバーボンを回し飲みしているではありませんか。私がじっと見ているのに気づいた彼らは手招きします。


「飲むか?」と英語で聞かれたので頷きました。私は童顔なので、飲める年なのか疑ったようでしたが、「No problem」と魔法の言葉を使っておきました。

 大声を出す訳にはいかないので、ひそひそ声で自己紹介。たしか、ドイツ人、オランダ人、フランス人、シク教徒の人でした。お互い言葉はあまり通じずとも、酒飲みにとって「酒」は世界共通言語です。(知らんけど)


 粛々しゅくしゅくと酒盛りは続きます。列車の振動音に紛れ込む連れの呻き声。


「彼はどうしたんだい?」

「腹痛だって」


 外国旅行にはつきものな生水と腹痛問題。似たようなことを経験しているみんなは、口々に溜息をつき、労う言葉をかけてくれました。


 翌日、持ち直した連れにその事を話したら、潔癖症の彼は腹痛の時以上に引き攣った表情でドン引きしていました。


 大丈夫、アルコール消毒だ。No problem.

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