白昼の宴

 書いてしまっていいものか。これは常識ある社会人の皆様は真似しちゃダメなお話です。(どれもそんな話だね)


 とある会社にパートで勤めていた時、かなり自由な人々が集まっていました。休憩室にホットプレートを持ち込み、昼に焼き肉や餃子などを食べていました。パートのおばさん達は強いので、所長にすら文句を言わせません。

 とうとう、ある時、貰い物の日本酒を持ってきた猛者もさがいました。


「日本酒飲める人!これめっちゃ美味いから試飲しよう!」


 休憩時間とはいえ、勤務時間内です。試飲のはずなのに、紙コップになみなみと注がれてしまいました。私は形ばかりの抵抗を示し、嬉々としてそれを飲み干しました。上質な酒はサラサラと喉を滑って行きます。

 飲んだのは違う銘柄ですが、有名な日本酒の名前を思い出しました。


上善じょうぜん如水みずのごとし

水はく万物に利しくしかして争わず。衆人のにくむ所にかたづきて、道にいてちかし。(老子第八章・抜粋)

「最高の善は水のようなものでなければならない。水は万物を助け、育てて自己主張せず、誰もが嫌うような低い方へと流れてそこに収まる」


 ああ、無為自然むいしぜんなりよ。偉大なるタオを勝手に引き合いに出す酒カス。老子先生もさぞや困惑されることでしょう。あ、酒好き詩人・李白先生なら許してくれるかも。


 午後は皆マスクをつけて仕事をしていましたが、匂いが漂っていたのでしょう。社員の若者に「上の人にバレんようにしてくださいよ」と釘を刺されました。


 大丈夫。多分バレてない。(そういう問題ではない)

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