死者の宴

 時々、飲みに行くメキシコ出身のRさんのバー。つまみにはタコスを猛プッシュしてきます。(時々大福)


「何入ってるの?」

「死ンダ動物ノ肉。アト、自家製サルサソース」

「食べる」


 店内には酒瓶と一緒に骸骨カラベラが並べられ、素敵な空間を演出しています。Rさんはカラベラを眺めながら、しみじみ語ります。


「アレ、僕ノ祖父サンノ頭ネ」

「お祖父さんに乾杯」

乾杯サルー!」


 とりあえず状況に乗ることにしている私はツッコみません。

 おおらかなRさんは、誕生日や特別な日には酒を奢ってくれます。年中千鳥足の私の事もハグしてくれる優しい人です。


 それとは別に、ある日、店で飲んでいると、何か祝い事があったらしいお客さんが来ました。


「おねえさんも一緒に飲みましょう!俺が奢ります!」


 奢ると言われて断る理由はありません。その場にいた全員が集まりテキーラショット開始。なんの祝い事かも聞かぬまま、全員で塩を舐め「サルー!」と叫び一気飲みしてライムを齧ります。(慣れぬ人はお気をつけください)


 おめでとうありがとうおめでとうありがとう。肩を叩き合い、楽しく飲みましたが、結局最後まで何がめでたかったのか分かりませんでした。


テッキーラ!!



【註】

『カラベラ』スペイン語で「頭蓋骨」という意味。死者の国メキシコの人気民芸雑貨。カラフルポップな色合い。

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