第1話

そして童子は追撃を怠らない。見せた隙は逃さない。




ネルの左脇腹を金棒で叩きつけた。




ネルは身体中に呪符を巻き付け回復しているが、常に血を吐き続けている。




「おい 少年...!」




「お前は呪術師の才能はからっきしだけど...」




「もしかしたら「死霊術師」の才能はあるかもなぁ...!?」




「お前の持っていたあの悪魔の書....」




「あれは正確には「悪魔を呼び出す書」...」




「お前の魂を悪魔と契約すりゃ、死霊術師にでもなれるかもな」




「最強の私でも、流石に厳しいかもしれねぇ...」




「あとは、任せた...。」




そう言うと彼女はグリモアールを俺に投げつけた。


そうだ。グリモアールが一般の呪術師に使えないわけだ。




グリモアールは「弱者のための書」




才能も、呪力も、魔力もない奴だからこそ使えるんだ。




俺は修行で身についた「呪力を1ヶ所に集める能力」で、グリモアールの表紙に撃ち込んだ。文字通り一滴も呪力が残っていない。




そうするとなぜか、グリモアールの文章が読めるようになっていた。




「俺は悪魔と契約でもなんでもする!全部ぶち壊してやる!」




彼女はその瞬間、安心したように息絶えた。次の瞬間、


その体を童子はミンチにして貪った。




「女の体はうめぇえええなぁあァァァァァァァァ!?」




ネルの体はもはや原型がない。


大量の血を、余さず飲み干している。




「ぁあ?何見てんだ雑魚がァァァァ??」




童子は俺の事をまるで認識していない。


脅威だと数ミリも思っていないだろう。


だが、それでいい。十分だよ。




「呪力がなくて!才能がなくて!けど!自分の魂悪魔に捧げる


勇気だけはあってよかったよ!」




グリモアールが突然輝き出した。そして、白紙のページに1つだけ呪文が映し出された。




それは禁忌の術。使用者を縛り付け、地獄へ引きずり込む術。




「ネクロマンス!ネル!」




そう言い放つと、地面に大きな影が出来た。その影から、


「生えてきた」のは、先程死んだネルであった。




「地獄からやってきたよ...。」




「ラウンド2の始まりだよ!」




蘇生術はその人物の「最高期」を甦らせる。彼女にとってそれは、アカデミー(魔術学校)時代であった。


眼帯の代わりに、その右目には青い目が埋め込まれていた。




「固まれクソ鬼!」




メデューサの石を埋め込まれたその目を見た酒呑童子は一瞬、


1秒にも満たない時間だったが動きが固まり、その瞬間を見逃さなかった。




「1回死んでみて分かったよ。私に足りなかったのは呪符の数に頼ってばかりだった事。」




「本当の呪符の使い方は、身体中の呪力を呪符に全部つぎ込んで放つ、最強の一撃だったんだ。」




彼女は血塗れになった呪符に、もう一度呪力を込めた。




「今度は負けないよ。これが私の「全部」」




たった1箇所、童子の心臓を向けたその一撃は、童子の後ろにあった山すら消し飛ばした。




「ァ、ァァァァッ」




「アアアアアアァァァァァァァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ッ」




心臓を貫かれた鬼は、爆発四散して飛び散った。




「さて、元の姿に戻せるようになるまで君はあと何年かかるかな?」




「なるはやで頑張ります...。」




これは、俺が最強の死霊術師になる物語だ。




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東方幻文禄 シャム @kurogi_sougo

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