46 君が必要なんだ

「ごめんなさい。私、オルタナくんが好きなの」

「!!!」

 

 衝撃のあまり雷鳴が友人を直撃したのを、見たような気がした。

 カケルは約束どおり、クリストファーとその想い人ニーサを引き合わせ、デートを用意してやった。

 喜んだクリストファーは彼女に告白したが、案の定、振られてしまったのだ。


「茶番だな」

 

 カケルにくっついて様子を見ていたオルタナが、ぼそっと呟いた。自分に向けられた好意の方は、完全にスルーしている。


「う~ん。クリストファーは、早く行動に移し過ぎなんだよな。オルトがそっけないから、ニーサちゃんを慰めてあげて仲良くなる作戦もあったのに」

 

 遠回りだが、目的を達成する手段もあったはずとカケルは思うが、愚直なクリストファーには無理かもしれなかった。


「はぁ。阿呆らしいほど平和だな」

 

 腕組みしたオルタナが感想を漏らす。

 カケルも同感だ。

 あれから侵略機械アグレッサーの攻撃もなく、順調に復旧作業が進んでいる。

 しかし、束の間の平穏に過ぎないことは分かっていた。

 外は相変わらず、侵略戦機械アグレッサーが徘徊し自滅虫ワームが飛び回る危険な世界だ。彼らがいつ大挙して押し寄せてくるか、誰にも分からない。


「……あの女を連れて行くのか」

 

 空を見上げて考えにふけるカケルの、その思考を見透かしたようにオルタナが問う。


「うん。彼女は必要だから」

「俺は?」

「オルトも必要だよ。決まってるじゃん」

 

 空から視線を戻して友人を見ると、眉間にシワを寄せてこちらを睨んでいる。


「イヴの件は根回ししようと思うけど、オルトは必要?」

「ふん。余計な気を回すな」

「だと思った」

 

 誇り高いこの友人は、カケルの助けを必要としないだろう。

 少しだけ高い位置にある紅眼を見返すと、オルタナはやおら手を伸ばして指先をカケルに突きつけた。


「お前は、肝心な一言が無い!」

 

 そう指摘を受け、ようやく気付く。

 当たり前のことだけど、言葉にしないと伝わらない。

 カケルは素直に頼んだ。


「ごめん、オルト。俺一人だと不安だから、付いてきて欲しいんだ。助けて欲しい」

「……仕方ねえな」

 

 仕方ないから、付き合ってやる。

 視線を外してそう言うオルタナの眉間のシワは緩んでいて、この友人は分かりやすいなぁと、カケルは苦笑した。

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