夜明け前
28 過去からの助言
疑わしきは罰せよ、ということだろうか。
アヤソフィアから少し離れた商業施設の地下にある、警察の留置場に放り込まれた。
窓のない暗い部屋で、長椅子に仰向けになって、天井を見上げる。
結局、帰れなかったなぁ。
ソーマおじさんは、俺を心配しているだろうか。
横になると眠気が襲ってくる。
夢の中で、カケルは幼い頃に戻っていた。
「人の歴史を記録する
検索すれば出てくるデータを、声に出して何回も読んだりしながら、自前の脳で記憶しなければいけない。それは旧時代的に思える。非常に面倒くさい、古くさい手段だった。
だから、教育係にいちゃもんを付けた。理由は何だってよく、ただ勉強をサボりたかったのだ。
「読むの面倒くさいよ~」
それにしても、この歴史という奴は、人死にや失敗の記録ばかりで嫌になる。敗者の記録は勝者によって上書きされるが、勝者も永遠に勝ち続けることは出来ない。歴史は、その時代の人々に都合が良い様に、どんどん書き換えられる。絶対に成功していて正しいのは、いつだって「今」だけだ。
「
初老の教育係リードは、穏やかな声で、子供のカケルを
「歴史を
「……」
「私達は、この暗闇が支配する
リードは、膨れっつらをしたカケルの頭を、そっと撫でる。
この教育係は数ヵ月後に、謎の失踪をするのだが、当時のカケルは知らないことだ。
「歴史は、人の意思決定、無数の
「リード?」
「未来に辿りつく手段はいつも、過去の中にしか存在しない」
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