売れる物を作るため

 あー。

 消費者からクレームが来るなんて稀だ。

 普通は中古で売る。で、お終い。

 ねえよ。そんな暇人。

 電話番号も公開してないしな。

 あのさ。

 素人創作家どもめ。

 俺たちプロが客とお話ししたがってると思われると困るんだけど。

 俺たちはこっそりエゴサしてるんだ。

 話しかけねえよ。

 当たり前だろ。俺たちは忍者だ。


 +


 小説投稿サイトか。

 ギャルゲも知らない負け組で結論は出てる。

 要らねえよ。こんなヒロイン。何が可愛いんだ。


 +


 いいか。

 話題になるのはヒロインが可愛い作品だ。

 何故ギャルゲを研究しない。

 流行り物には目を通せ。

 創作家になりたいなら義務だ。

 マニアな物を追うな。

 ギャルゲがどれだけ流行ったか。

 買えよ。何本か。研究しろよ。

 あー。

 黎明期を知らないと無理か。目利きが出来ないのか。

 ふーん。

 まあ、ブランドが山とあるからな。

 はーん。

 なるほど。

 ふーん。

 はあ。

 ふーん。

 どれも一緒に見えるのか。

 はあ。

 あー。

 サンプルCGでレベルは分からんか?

 あー。

 絵の目利きが出来ないと駄目なのか。

 絵が可愛かったらストーリーなんかどうでもいいぞ。

 いいか。

 ストーリーなんてものは「ない」んだ。

 あるのは「シーン」だけだ。

 シーンとシーンの連続を「ストーリー」と呼んでいるんだ。

 便宜上な。

 ないんだよ。

 ストーリーなんてものは。

 シーンがあるだけだ。

 シーンとシーンを繋ぎ合わせろ。

 無論、格好いいシーンをだ。

 創作の才能とは格好いいシーンを考えるセンスだ。

 ストーリー?

 これはな。

「最後まで読んでくれれば面白いんですー!」という言い訳だ。

 ストーリーとか言い出す奴は、「最後のオチが面白ければ途中は適当でもいいだろう」と仕事を甘く見ている。

 地雷なんだ。「ストーリー」という単語。創作業界ではな。

 シーンが全てだ。

 2時間みっちり面白くないといけないんだ。映画はな。


 +


 いいか。

 ギャルゲはストーリーなんか、どうでもいいんだ。

 最初他人だったヒロインが懐いてくれるのが楽しいんだ。

 変化を楽しむんだ。

 他人→恋人の変化だ。

 人情芝居なんだ。

 いないけどな。リアルには。こんな女。

 浪花節なんだよ。

 あー。

 こんなに優しくしてやったんだから恋人になってくれてもいいだろう?

 はい。分かりました。お嫁さんにおなりします。

 これがギャルゲだ。

 割と日本人の心には合ってるらしい。

 まあ、流石にネタも尽きたが。

 日常物ラノベ?

 ギャルゲでいいだろ。

 もしくは萌え4コマ。

 あー。

 萌え4コマを知らないか。

 漫画と言えば、ギャグかバトルだと思っているのか。

 はー。

 ふーん。

 可愛いキャラを書くなら必須なのに。

 で、サメの餌にするんだよ。


 +


 萌え4コマは「男のいないギャルゲ」だ。

 作者は9割が女だ。

 楽しい。

 女性作家の感性は。

 はー。

 女はこんな世界に生きているのか。

 面白いんだよ。

 友達の髪を、うっかり切っちゃった!

 →絶交される。どうしよう!

 こういうの、男作家には無理だろう?

 好きなんだよな。萌え4コマ。

 頭がいいんだ。どの作家も。

 あのな。

 酷い言い方をするが。

「画力」で誤魔化せない。

「コマ割り」で誤魔化せない。

 大ファンなんだ。


 +


 あのな。

 日本最古の作家は紫式部だ。

 対抗馬は清少納言だな。

 女作家の方が人気があるんだよ。日本は。

 あー。

 好きな作家か。

 いや、数え切れない。

 男作家も好きだが、どうしても「ありがち」なんだ。

 あー。

 男作家と競い合っても「凡庸」なんだな。

 女作家を超えたい。

 これがささやかな望みだ。

 女作家には負けられないんだ。

 だから、逆説的に恋愛物書いてみたいんだな。

 女には書けない恋愛物。

 恋愛小説で女を超える。

 これなら最高峰の作家だろう。


 +


 あのさ。

 女キャラを書くって、チキンレースなんだな。

 フェミ。

 あー。

 男が女を書こうとすると、どうしてもな。

 エロになる。

 無限に都合のいい、お人形になる。

 だから、萌え4コマを読めと言っているんだ。

 女性作家の描いた女性。

 いいか。

 これは「同性の目から見てセーフ」という意味なんだ。

 こういう女の子は可愛い。

 男に媚びていない。

 これなんだ。

 男に媚びていない女の子を書く訓練になるんだ。女性作家を読むことは。

 萌え4コマは面白い。

 ただまあ、俺の意見だ。

 君は普通に女性小説家の本を買ってもいい。


 +


 ボーダーラインなんだよ。

 こういう表現はOK。

 こういうキャラクターはOK。

 女の目から見て。

 なるほど。勉強になる。


 +


 男に好かれる女はエロゲで学べ。

 女は好かれる女は萌え4コマで学べ。

 好きな萌え4コマか。多過ぎる。

 挙げられない。


 +


 あー。

 次のブームか。

 何だろうな。

 作っておいて何だけど、サメ映画は狙い過ぎなんだよ。

 ようやるわ。

 俺たちは真面目な映画を作りたい。

 B級ってことだ。

 ちゃんとしたエンタメをお届けしたい。

 作者が格好いいと思われたいと思う。

 これが最高に邪魔。

 創作は売り物だ。

 ファッションじゃねえ。

 お客様のために作るんだ。

 服やアクセサリーではないんだよ。


 +


 俺たちは、ちゃんとした映画を作りたい。

 単にサメ縛りをしているだけなんだ。

 殺人玉ねぎの逆襲には、サメ出て来ないけどな。

 うん。


 +


 いいか。

 キャリアというのは幻想だ。

 これはスポンサーを募るためのものなんだ。

 仕事の腕ではない。

 これは「過去の成果」なんだ。

 分かるか?

 キャリアというのは「過去に何をしたか」だ。

 未来で何が作れるかとか、そんな保障はどこにもねえ。

 スポンサー様の判断材料なんだ。

 出資してくれるかどうかのな。

 いいか。

 キャリアというのは実力のことではない。

 真面目さのことなんだ。

 キャリアを積んで増長したら元も子もねえ。

 スポンサーたちもプロだ。

 天狗になってる奴らは一杯見て来てる。


 +


 いいか。

 簡単な仕事はするな。

 出来るかどうか分からないことに挑戦しろ。

 あー。

 俺が散々馬鹿にしたゲーム配信もそれだろう? ムズゲーに挑戦しないと観客なんて来ないだろう?

 人生は挑戦だ。

 難しいことをやるのが正解なんだ。

 逃げるな。

 あーあ。

 何でだろうな。

 お金を稼ぐのは命がけ。

 こんなこと確かに学校では教えないな。

 教育の不備だ。


 +


 俺が欲しい物?

 金と平和。

 遊んで過ごしたい。

 何か。

 あー。

 別に。

 頭脳労働者の勤労は、これで合ってるんだよ。

 ぼーっと過ごすのも仕事の内なんだ。

 これは「無形の構え」なんだよな。

 素人には分からんらしい。

 構えってスタミナを使うんだ。

 敵が射程に入ってから構える。それがプロだ。

 周りに雑魚しかいねえなら、イキり散らす必要はねえんだよ。


 +


 いいか。

 スタミナを温存しろ。

 それがプロだ。

 やってますアピール。

 一目で素人だと分かる。

 お前、成果主義者ではないな?

 プロは1つ2つ仕事は捨てる。

 ゲームでは当たり前だからだ。

 相撲もな。

 12勝3敗なら上出来なんだ。

 捨てゲームを使いこなせ。

 全戦全勝はどうでもいい。

 いくら賭けたかだ。

 いくら儲かったかだ。

 失敗経験のない奴って、信用出来ない。

 プロの管理職の目から見れば、「ミスを隠蔽してるだけ」なんだな。


 +


 いいか。

 ミスをしたというのは「情報」だ。

 この仕事は、こういう部分が難しい。

 情報を共有しに来ない奴は仲間じゃねえ。

 逆に言えば、お前はその「難所」のプロフェッショナルになったってことなんだ。

 どうして、こういう「オイシイ」情報を隠す?

 お前は馬鹿だ。

 ミスをしたら「仕事が難し過ぎた」と主張すりゃいいんだよ。


 +


 はあ。褒められたい?

 ボケ。

 罵倒されて慰謝料がっぽり。

 これが社会人だ。

 本当、どうしようもねえな。

 はあ。

 俺を訴えるってか。

 面白いな。

 受けて立つ。このアホ。

 勝訴。

 うん。

 作品作りに活かせそうだから、一度裁判はやってみたかったんだ。


 +


 あー。

 うーん。

 ふん。

 俺はヤクザ者なのか。

 はあ。

 こんなに真面目に働いてるのにか。

 世の中の連中は何考えてるんだ。

 お前らの仕事なんて、ちゃち過ぎる。

 そんなんだからミス隠蔽するんだよ。後輩に蹴落とされるから。

 あーあ。

 人には出来ない仕事をやれ。

 これ基本なんだけどな。

 ふーん。

 はあ。

 それだけでは社会が回らない。

 まあな。

 だけど、それって「機械」ってことなんだ。

 新しい機械を導入されたら、それまでだ。

 どうしようもない。

 あーあ。

 うん。

 まったく。

 あー。

 ふーん。

 はー。

 そんなに俺が嫌いか。

 うーん。

 理解出来ん。

 いや、俺が嫌いだってのは理解出来るが。

 先生に泣きつくのか。

 はあ。

 ふーん。

 はあ。

 ふーん。

 分からん。

 裁判に訴えて勝てる?

 はあ?

 あの怠け者が?

 あー。

 裁判官は体育教師だな。

 体育教師は文系教師の逆なんだが。

 あー。

 ふーん。

 これは発見だ。

 どうでもいいけど。

 あー。

 うーん。

 あー。

 うーん。

 裁判官は人の命を握ってるんだよなあ。

 あー。

 覚悟が違うと言うべきか。

 あー。

 俺、殺しはしないな。

 いやまあ、リストラは一杯して来たが。

 お目目きらきらの能無しどもを。

 ふーん。

 あー。

 うーむ。

 何なんだろう。

 どうしような。

 虚しい。

 俺、教師になりたかったのかなあ。

 なあ、大川先生。

 俺、どうすればいいと思う。

 教員免許取らなかったよ。面倒で。

 教師では嫁3人喰わせられないし。

 子供も1人ずつ出来たしな。


 +


 ふーん。

 リストラをテーマに1本撮れねえかな。

 あー。

 スポンサーつきそうにねえな。ウチ、サメ映画会社だし。

 ふーん。

 あー。

 はあ。

 労働者は正義ってことになってるのか。

 あんな能無しどもが。

 ふーん。

 あー。

 ファンタジー世界にすれば行けるかな……って。

 それが「有能追放」かい。

 リストラ社員無双。

 あー。

 どうしような。

 一応犠牲者なんだよな。教育の。

 社会に出ても勉強なんて役に立たないよ。

 文科省は意地でも認めねえ。腐ってやがる。

 あー。

 かと言ってな。

 お役人も一労働者なんだよ。

 批判してもしゃーねえんだなあ。木っ端役人なんて。

 あーあ。

 どうしよう。

 使えねえ連中ばっか。

 あーあ。

 どうしような。

 うーん。

 あー。

 あーあ。

 うーん。

 ふーん。

 はあ。

 まったく。

 何でだろうな。

 22年も勉強して来てこのレベルか。

 足りない。

 月20万も出せるか。ボケ。

 今は不景気と言うかデフレの時代なんだよ。

 月20万って、バブル時代の50万くらいの価値あるぞ。

 新卒に月50万出せ?

 これがお上の方針?

 あーあ。

 この国、長くねえなあ。


 +


 はー。

 シリアス映画を撮りたい?

 我が社の作品を言ってみてもらえますか。

 あのね。

 シリアス映画を「観たい」だったら採用なんです。

 あなたが、お客様と同じ目線に立っているのだったら、我々も意見を拝聴しました。

 要らないんです。

 クリエイターに憧れている人。

 お客様の立場に立てる社員が欲しいんです。

 結果は後日。


 +


 あー。

 社員が増えないとジリ貧か。

 いや、別に。

 俺の目標は腕1本で喰ってくことだし。

 会社自体は、いつ潰れてもいいよ。

 むしろブランド価値損ねるから別会社作る方がいいかもな。

 あー。

 ふーん。

 あー。

 なるほど。

 エロゲブランドと同じだな。

 我が社はサメ映画で有名になり過ぎた。

 シリアスなんて撮れねえ。

 殺人玉ねぎの逆襲で精一杯だ。

 と言うか。

 シリアスを馬鹿にしてるんだよな。俺。

 あ? お前たちも?

 うん。

 ふーん。

 あー。

 金稼ぐとシリアスになるな。人間。

 守りに入ったってことか。

 ふーん。

 あー。

 老害なんだな。俺たち、もう。

 感性が若くないのか。

 あー。

 はあ。

 老人クリエイターって何作ればいいんだ。

 あー。

 分かんねえ。

 老人の敵は若者か。

 で、若者は権威だな。

 反権威やるか。

 潔く若者をいじめまくるか。

 お前ら能無しだって。

 ふーん。

 これな。

 こういう結論になるのか。

 青春批判。

 これが俺たちだった。永遠にこれだ。

 あー。

 どうしような。

 きっつい。

 でも、いいのかな。

 分かんねえ。

 でも、これしかない気がするんだ。

 青春。

 ゴミ。

 てか、これ五行思想なんだよな。

 玄冬、青春、朱夏、白秋。

 4つで1セットなのに。

 あー。

 青春は15歳から29歳か。

 あー。いい。

 俺たちは玄冬を撮るぞ。

 14歳以下の物語だ。

 大人たちに騙されていた時代を書く。

 TVに騙されて地獄を見た恨みは忘れない。

 これでいいんだ。

 俺たちは、あの新卒どもより若いんだな。

 今のネットの時代に、学歴が通用すると無邪気に思ってやがる。

 何て老害だ。

 アイツら、すでに老害なんだ。


 +


 あー。

 結婚な。

 どんな女が、そういうビデオに出てるか分からないから結婚無理だ。

 新卒採用な。

 今時の若い者は、どんなSNSやってるか分からないから採用無理だ。

 恨むならインターネットを恨め。

 お前が信用出来ない。

 ぶっちゃけ、バイトテロしたことありそうだから。


 +


 信用か。

 これはギャンブラーの誤謬だ。

 100円貸してくれ。

 ほれ。

 120円にして返してやる。

 1000円貸してくれ。

 ほれ。

 1200円にして返してやる。

 220円も儲けたな。おめでとう。

 なあ。

 1兆円貸してくれ。

 どうした?

 貸してくれないの?

 俺を信用しろよ。

 1兆2000億円にして返してやるってば。


 +


 あー。

 恋愛か。

 俺、恋愛したがってる女の子は嫌だ。生理的に。

 うん。

 大人しい子がいい。

 出会いがねえな。いや、あったんだけどさ。

 小学校からの幼馴染1人と高校時代に出会った同学年2人に3股かけてる。

 日本は一夫多妻制になってしまった。

 ウィル能力者だけだが。

 あーあ。

 ウィル能力が何か知らない?

 はあ。

 映画撮るかな。

 別に。

 誓約書なんか出してないし。

 てか。

 あったとしても無効だと思うな。

 こっちは高校生だったんだ。

 保護者のサインじゃないと意味ないだろ。

 ふーん。

 映画撮るか。

 主役はアイツしかいないなあ。

 遺族の許可下りるかなあ。

 松川先輩、国会議員なんだよ。

 あー。

 売名になるから許可してください。

 これで行くしかねえか。

 あーあ。

 どうしような。

 俺たちの青春。

 アイツがいなければ地獄だった。

 何で死んだ。

 子供3人も遺して。

 アイツを好きな女の子って何人いたんだろう。

 あーあ。

 やる瀬ない。

 アイツ、あの世で幸せなんだろうか。

 分からない。

 あーあ。

 どうしよう。

 はあ。

 虚しい。

 アイツなら親友になってくれたはずなのに。

 1個下か。

 はあ。

 うん。

 まあ、いいよ。

 死者は戻って来ないんだ。

 あーあ。

 脚本どうしよう。

 何年くらいかかるかなあ。

 スポンサーつくだろうか。

 学校が手回してないといいんだけど。

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