メリークルシミマス

ナナシリア

メリークルシミマス

 俺はクリスマスが嫌いだ。


 俺の他にも、クリスマスが嫌いな人はたくさんいるだろうが、それでもこの行事がなくならないのは一体どうしてだろうか。


 誰からも嫌われているのに絶対になくならない、定期テストみたいなものか。


 それとも、クリスマスが好きな人もいるから消すことが出来ないということだろうか。


 どちらにせよ、クリスマスという行事は十二月の季節に馴染みすぎていて、十二月とクリスマスはもはや切っては切れない関係にある。


 商店街に流れ続ける曲名もわからないジングルベルの曲が耳に染み渡るのと同じくして、冬の寒さが肌に溶け込む。


 嗚呼、こんな俺にもクリスマスの出会いというものがあればいいのに。


 そう思っても自分から行動することもなく、ただ惰性で普段と同じ『一日』を消費する。


「最悪な日だ」


 この陰鬱なストレスを惨めに見つめようと、スマホを開く。


 少し前に一口だけ購入した宝くじの結果が、そろそろ発表される頃だ。どうせ外れているから、元から気分が悪いうちにどん底に叩き落としておこう。


 ああ、外れてる。


 元から知ってたのに、最悪だ。


 苦しいなあ。


 俺が嫌いなのは、クリスマスじゃないのかも知れない。


 俺が嫌いなのはきっと、なにも持っていない俺自身だ。


 もう、いいかなあ。


 苦しみから解放されても、良いんじゃないかな。


 町中を照らすクリスマスツリーの飾りつけのネオンが、鬱陶しくてたまらない。


 実際になにかを伴うわけではない飾りつけを見て、綺麗だなんて単純な言葉をかける人々が、愚かしく見えてたまらない。


 今この瞬間を生きているのに未来を見ろなんて言われるこの社会が、あまりに耐えがたい。


 多くの人の理想が入り混じって錯綜した未来の像が、形を成せないほど崩れた。


 ぽろり、と目からガラス玉が零れ落ちる。


 やっぱり、期待は捨てられなかったのか。


 歩く。


 この期待が、心残りに成長する前に。

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メリークルシミマス ナナシリア @nanasi20090127

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