最終話:歴史変えてるじゃん。
私の時代に来ちゃった、偽の坂元 龍馬さん。
「龍馬さん、改めてごめんなさい、私の時代に連れて来ちゃって・・・」
「しかたないぜよ・・・気にすることはないき、お涼殿」
「どこの空の下におっても同じじゃ・・・どこで生きても同じこと」
「それに、ここならが命を狙われることのないき〜のう」
いきなり私の時代にやって来て右も左もわからない龍馬さん、だから
昼間は私のマンションから出られない。
お買い物もしたことなし、ましてやスーパーなんて龍馬さんにはありえない場所。
だから私が小学校へ行ってる間はマンンションでテレビでも見ててもらって
時間を潰してもらっていた。
その間、情報番組なんか見てた龍馬さん、以外と情報通になった。
この世界でちゃんと一人で生きていけるようになるまでは面倒みてあげなくちゃね。
でも私が食材を買って冷蔵庫に入れて置くと龍馬さんはちゃんと晩御飯を作って
待っていてくれたの。
「龍馬さん、お料理とっても上手なんですね」
「私、お料理苦手で・・・・」
「ずっと一人身の生活じゃったけ〜のう、まあ料理くらいはできるき」
「お涼殿よりは上手いかもしれんぜよ」
それ以来、私んちの主夫は龍馬さん。
偽物の龍馬さんはぶっきらぼうで不愛想だけど、とってもいい人。
パワハラのないし、セクハラもないし、とっても紳士的。
優しくて大らかで包容力があって、その眼差しはいつも遠くを見つめてる。
心斜め15度に傾けて・・・。
私の時代では幕末をかけて行くこともない。
まあ、向こうにいる本物の龍馬さんが命をかけて活躍してるんだろうけどね。
偽の龍馬さんとは特にトラブルもなくそれなりに生活できてるし・・・。
でも、ずっとどこへも行かずのマンションに閉じこもってるってのも
いけないかなって思って私は連休を利用して向こうの龍馬さんとお龍さんが
新婚旅行に行ったって言う鹿児島県へ偽物の龍馬さんを連れて旅行に出かける
ことにした。
で、旅行に行くにあたって龍馬さんは刀は武士の命、持って行くって言い
張ったんだけど・・・そこはそれ。
そんなの腰にぶら下げて歩いてたら銃刀法違反で捕まっちゃうでしょ。
旅行どころじゃなくなるからね。
だから刀は無理にでも置いていってもらったの。
でも懐にピストル潜ませていたら意味はないんだけどね。
で、 京都を出て長崎へ。
そこから 塩浸温泉、穏やかな錦江湾に雄大に浮かぶ桜島を眺めながめ
日当山温泉へ泊まって・・・霧島栄之尾温泉でふたりでゆっくりくつろいだ。
言わば温泉巡り。
旅行を充分楽しんだ私と龍馬さん。
で、向こうの龍馬さんとお龍さんの新婚旅行の話を旅館の縁側で偽の龍馬さん
に聞かせてあげたの。
龍馬さんはそうかって頷いただけで何も言わなかった。
なにか心に引っかかることでもあるように・・・。
で、ポツンと言ったの。
「わしにはお涼さんがおるき〜・・・それでええ・・のう?」
って・・・。
そう言われて私は自分の気持ちにハッと気がついたの、龍馬さんと一緒に
暮らしてたことで私は龍馬さんを好きになってたんだって・・・。
そして、龍馬さんは話を続けた。
「向こうの龍馬は、もうとっくに暗殺されちゅうがやき」
「ああ・・歴史が変わったなんてことないからそうなんだね 」
「残念だね・・・生きててくれたらよかったのに・・・。」
「それでええき?」
「え?」
「歴史の中で龍馬は暗殺されたことにしておけばええんぜよ」
「どう言う意味?」
「わしは生きて、ここにおるってことぜよ、お涼殿」
「お涼殿はわしのことを、ずっと偽の龍馬じゃと思っとったじゃろ?」
「え?だって坂元 龍馬さんなんでしょ?」
「わしの名前は、坂元・・・
「え?どう言うこと・・・それって?」
「わしが本物の坂本龍馬っちゅこっちゃ」
「じゃから、わしは暗殺されたってことにしとけば、ぜ〜んぶ丸う収まるき・・・。
この時代で、わしは生きてお涼殿と暮らしていくき〜のう 」
「本物の龍馬さんなの?」
「私を騙してた?」
「騙しとったわけじゃないき」
「そうして置いたほうが、なにかと都合がいいえと思うたでよ」
「わしはお涼殿をはじめて橋の上で見たときから、おまんに惚れちょった
きい・・・ 」
「じゃけえ、こうなってよかったっと思うちょる」
「わしは向こうで暗殺されることなくこの時代で生きとるんじゃ、お涼どの」
「坂元 龍馬なる偽物はもうどこにもおらんき」
「つうことでお互い寄る年波まで、のんびり暮らすでよ」
「よろしくの?お涼殿」
まじでなの?・・・そんなことってある?
偽物だって思ってた本物の龍馬さんが私の時代で生きてるって?
暗殺されてないって?
新説・龍馬伝?・・・それって歴史変えてるじゃん。
おしまい。
新説・龍馬伝?。 猫野 尻尾 @amanotenshi
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