第14話 別れる2人

 半年後、新吉はカッパの里から離れる渡し船の端っこに立ち、夕焼け空をバックにシルエット状態の与七に、いつまでも手を振り続けていたのであった。


 新吉は与七の頬を輝くものがこぼれ落ちたのを確かに見た。

 その輝きは、新吉に過去の過ちを償ったことを保証していた。


「さようなら与七! さようなら!!」新吉はせいいっぱい手を振り続けた。


 そのとき、船が揺れてずっこけて、新吉は縁に頭を強く打った。

 そのせいで記憶喪失になった新吉は初対面も同然の船頭さんに尋ねた。


「ぼくここで何してんすかね?」

「カッパの与七って奴に涙ながらに手を振ってたよ」

「そうでしたか」とガバリ起き上がってさっきと同じように手を振った。


「さようなら与七!(え、本物のカッパじゃん! まあいいか) さようなら!」


 新吉は与七の頬をこぼれ落ちるきらめきがまだ見えた。その輝きがもらい泣き効果を発揮して、新吉の涙腺をいつまでも刺激し続けた。


(了)

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虐げられた貯水槽 富山屋 @toyamaishikawa

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