第64話

 選挙が終わって、天野さんとの関係に一区切りついた木曜日。


 何故か俺は話題の中心にいた。どうやら、また天野さんと恋人関係にあるのでは?とかいう噂がながれているらしい。折角上書きしたのに……いったい誰が掘り返したんだ!?

 

 今回は理由がわかっているので、放っておいても問題はない。しっかり天野さんが否定してるみたいだしな。


 さて、選挙も終わったし、しばらくはのんびりとしてられそうだ。


 「なあ、神崎……、俺頑張ったよなぁ?」


 「んあ?……まあ頑張ったんじゃないか?」


 そういえば、林は落選したんだっけ。それなりに奮闘していた……はずだけど、きっと決め手は日頃の行いだろう。ま、そればっかりは仕方がない。一日や二日で改善できるものじゃないからな。


 「俺の夢が……」


 「そんなに気を落とすなよ」


 「ふぐぅううう」


 こりゃダメだな。本人の気が済むまで放置のほうがよさそうだ。林を放置して、食堂へ向かう。



 

 少し日が開いただけなのに、とても懐かしく感じる食堂の賑わった様子をぼけっと見ながら順番を待つ。

 ゆっくりと流れていく列に流されていると、席に座っている複数の生徒とやたら目が合う。


 あの演説のせいで、天野さんは苦労が絶えないらしい。クラスメイトに噂を否定して、他のクラスから聞きに来る生徒に否定して、上級生や下級生でも聞きに来る生徒はいたらしく、昨日連絡で苦情が飛んできていた。


 昨日俺のほうに聞きに来る生徒が少なかったのは、大体が天野さんのほうに行ったからだと知って感謝したら、またカフェで何かを奢る約束を取り付けられてしまった。


 さてと、そろそろ頼むものを決めないと……。


 普段なら適当に頼むはずだが、日が開いたせいもあってか悩む。正直な話、どれも美味そうというより美味いんだがなぁ……。

 ないものをねだってもしょうがない、今日は唐揚げ定食にしよう。


 注文を終えて、受け渡しを待っていると見た事のある顔が視界に入った。


 確か名前は……倉田さんだったっけ。生徒会メンバーの一人だけど、関りがほとんどないから直ぐに出てこなかった。

 これからも、俺の奉仕活動以外で関わることはないだろうけど。


 そう思って視線を外そうとしたとき、偶然倉田さんと目が合った。一秒も合わせることなく外したはずだけど、何故かこっちに歩いてきている気がする。


 きっと気のせいだ、そうに違いない。いや、そうであってくれ!


 しかし、俺の思い虚しく彼女は俺の名前を呼んできた。


 「おーい、奏ちゃんの彼氏~」


 違った、名前よりも最悪な呼び方だった。

 おかしいな、自己紹介の時にフルネームを教えた記憶があるのに……。


 「はーい」


 うーん、考えるのと同時に返事をしてしまった。これでは天野さんの努力が水の泡だ。しっかりと俺からも否定しないと!


 「一緒にご飯、食べない?」


 「喜んで」


 

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学園の美少女たちの俺に対する態度がおかしい @23232323232

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