第5話
『川越と蓮見って幼馴染なの? 全然気づかんかったわ』
ある日、ずっと仲良くしていた友達にそう言われた。
過去にも似たようなことを言われた憶えがある。去年も誰かが驚いていたし、中学でもそんな話をされた気がする。
その言葉に悪意はなく、本当に何気ない台詞だった。
けれど僕はその台詞が気に入らなかった。
「あの日僕たちはここに立ってた」
傾いた電柱を背にして、僕は彼女と向かい合う。昨日そうしたように。
僕たちは幼馴染でいつも傍にいた。けど、ただのクラスメイトに過ぎない。
いつからか、その事実が嫌になっていた。
あれだけ運命に愛されておきながら、僕の名前をくん付けでしか呼ばれないことが嫌だった。彼女の名前をさん付けでしか呼べないことも嫌だった。
ずっと一緒にいたけど、もっと近くにいたかった。
「僕は蓮見さんのことが好きだったんだ」
彼女の目を真正面から見つめて想いを告げた。昨日そうしたように。
けれども僕の声音はロマンチックな告白というより、懺悔に近い響きを纏っている。
僕はそれ以上何も言わなかったが、彼女には伝わったらしい。
「だからこんな
「ああ」
僕は蓮見に告白するために、この交差点へと呼び出した。
何度もカーブミラーを確認しつつ彼女がいつ現れるか緊張しながら待っていたのを思い出す。
それからまもなく彼女はやってきて、二人見つめ合っているところに車が突っ込んできたのだ。
「ごめん」
もう一度謝って、頭を下げる。
謝って済むようなことではないけれど、それ以外に方法が見つからない。
彼女の人生は僕が奪ってしまったようなものだ。あの日僕が呼び出さなければ巻き込まれずに済んだのに。
「そうなのね」
再び頭上から降ってきた声色は思っていたよりも弾んでいて、僕は顔を上げる。
「やっと告白してもらえたのね、私」
そこには最高に勝ち誇った表情を浮かべている幼馴染が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます