第3話
「なあ、国王様。『戦士』ってどんなヤツだったか覚えてるか?」
「心身ともに屈強でとても強い方でした」
「ああ。そうだな」
この国一番の怪力だと、旅の最初に国王が話していたのを、俺は覚えている。
「じゃあ、そんな屈強な『戦士』がなんで死んだか想像つくか?」
「身体を張って、魔物と戦闘していたから……ですかね?」
「ふんふん……。なるほど……」
確かに、戦士は魔物の群れに突っ込んでは、傷だらけになりながら俺たちが攻撃できるスキを作ってくれていた。
「残念ながら、不正解だ」
「では、何故……?」
「俺が殺した」
「な、なぜ!?」
姫様が声を荒げる。
「だって、アイツが魔物側に寝返ったんだよ?そりゃ、殺すしかないだろ」
その一言によって、ざわつきが生まれる。
「戦士様が……、魔物に……?もしかして、魔王に操られて……?」
「うーん……そこまではわからん。けど、なんかしっかりと意思はあった気がする。……気がするだけだけどね」
「なぜ、そのようなことを……」
「俺たちは仲間を二人も失った。そんな絶望的状況で、『生きたい』って思いが生まれたんだろうな」
明確には、『死にたくない』だったのかもしれないが。
俺は仲間の顔を思い出し、笑う。
ガリガリにやせ細って、苦しそうな顔で死んだ『魔導士』
首にナイフが刺さったまま、血まみれで死んだ『僧侶』
かつて仲間だった俺を裏切り、俺の手によって死んだ『戦士』
そのどれもを思い出し、笑う。
「勇者様……。なぜさっきから笑っているんですか?」
「あー……、いやぁ……。なんかなあ……。面白くなっちゃってさ」
「いい加減にしてください!」
俺の頬に衝撃が走る。
どうやら、一発喰らったらしい。
「姫様の怒りも分かるよ」
きっと姫様の目には、俺がとても嫌なヤツに映っていることだろう。
「姫様は気付きましたか?」
「……」
姫様は答えない。
『魔導士』も『僧侶』も『戦士』も。
「全員、魔物に殺されたわけじゃないんだよ」
姫様はハッとする。
「冒険によって、華々しく戦死したわけじゃない。この環境が生んだ、’’苦しみ’’や’’絶望’’がアイツらを殺したんだよ」
剣も魔法も、一切関係ない。
「さてと……。仲間の話は終わったし、何か聞きたいこととかある?」
俺は周りに問いかけるが、誰も答えない。
「ない?ないなら、俺は飯食いに戻るけど?」
それでも、誰も何も声を発さない。
「じゃ、これで俺の冒険譚は終わり~」
重たい空気が流れる中、俺は自席に着いて飯を頬張るのだった。
冒険記 伊島カステラ @itoo_ijima
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