第2話
「さて……それは魔道士が死んでから少しした頃かな?俺たちは仲間の死を乗り越えながら着実に進んでいたんだ」
正直な話、一緒に旅をしていた人間が死んだのは、かなりクるものがあった。
「なあ、姫様。姫様は絶望したとき、どうする?」
突然の俺の問いかけに、姫様は一瞬びっくりした顔をする。
「えーっと……、美味しいものを食べたり、楽しいことをしたり……ですわね」
「ま、そうだろうな。じゃ、それが出来ない環境下だったら?姫様はどうする?」
「え?えーっと……?」
姫様は長い時間考えてはいるが、中々答えが出てこないようだ。
「わからんか。まあ、わからないか」
平和でなんでも手に入る環境にいる人間なら、そんなことは思いつかないだろう。
俺は姫様から視線を外す。
「じゃ、次はお前に聞こうかな」
俺は兵士の一人を指さす。
「お前、確か僧侶のことエロい目で見てたよなぁ?そんなえっちな僧侶ちゃんがどうなったか、お前は分かるか?」
俺は、目が泳ぎまくっている兵士にのもとまで近付く。
「僧侶はな、自決した。魔物の血で赤黒く錆びたナイフで……、自らの手で、自らの首を……」
俺は兵士の首を、ゆっくり指でなぞる。
「僧侶はな、耐えきれなかったんだよ。この世界に当たり前に存在している『残酷』さというものに」
つい数時間前まで、一緒に歩み、戦い、話していた人間が、目を覚ましたら亡骸になっていたんだ。
齢15の少女が絶望しないわけがない。
「勇者様、その態度は一体何なんですの?何故、仲間の死を笑うことが出来るんですの!?」
どうやら俺は、笑っていたらしい。
自覚はない。
「すまないすまない。ちょっとな……」
思い出せば出すだけ、面白くなってしまうんだ。
許してほしい。
「んじゃ、僧侶の話はこの辺にしといて……。次は『戦士』の話でもしようか」
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