第5話
鴉である私はそれを知っていました。
何故か?
簡単です。
私は自由に空を飛べるのですから人間の話なんてたくさん聞いているのですよ。
それに
私は一番最初……正確には二番目ですかね。
あのお屋敷のカナリアに恋をしていたのです。
とても美しい歌のカナリアでした。
私はこのような鴉ですがそのカナリアを愛しく感じていました。
でも
カナリアはすぐにいなくなりました。
当時の私はその風習を知りませんでした。
だから、その事実を知った時には悲しくなりました。
そこでせめて、次のカナリアは助けようと私は決めました。
私は次のカナリアに私の知る限りのことをお話しました。
けれど
カナリアは頑なにそれを嘘だと言い続けました。
鴉の虚言だと。
私はカナリアの意志で出ていってもらいたくてずっと話し続けました。
でも
やはり拒絶されてしまいました。
そして、そのカナリアは最後まで私の言葉を拒絶して…いなくなってしまいました。
次のカナリアは無理矢理にでもと決めました。
ですが、私のような鴉一羽ではカナリアのあの牢獄のような籠を開けることなどかないませんでした。
私はずっとそうしてきたのです。
そして、私は諦めました。
だから、私はカナリアに幸せかを確認するような口振りをしていたのです。
でも、諦めきれなかったのでしょうね。
その証拠にあんな思わせぶりな言葉を言ってしまいました。
カナリア
私はあなた方のような不自由のない暮らしはできません。
たくさんの不自由があります。
毎日なんて約束されていません。
ですが…
カナリアを助けられないこの弱い弱い身が何よりも不自由だと思っています。
私は何度も何度もカナリアを見続けます。
何一つできずに…。
不自由な鴉と籠のカナリア 東雲 @sikimura
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