おわりに
帰り道も、帰宅したあとも、ずっとマッツとの撮影での後悔がもやもやとつきまとっていた。
やはり、直前で選択肢が増えたのがよくなかった。加えて、バックハグで殺されていく人の多さがさらなる迷いを生んだ。
いくつかある私の困った性質のひとつに、大勢がやっていることは避けたくなる、というやつがある。こいつが非常にめんどうくさい。本当はやりたかったとしても、それが多数派であると、なんかカッコつけて「そういうのはいいや」を装い始めるのだ。そんで、あとで猛烈に後悔する。もちろん今回も。
まったく、私はなにをやっているのだろう。ハグは他の人にもしてもらえる可能性があるけど、殺してもらえるのはおそらくマッツだけだというのに。我が本音よ、お前とは一度、腹を割って話しをしないとだめだな。
しかし、直前でKill meの割りこみがなかったとしても、ちゃんと撮影できていたかはかなり怪しい。だってマッツの撮影は、ジェスチャーが伝わりさえすれば、言葉は必要なかったのだ。これほどイージーモードなコミュニケーションはそうあるものじゃない。むしろ私のためにあると言ってもいいくらいの撮影スタイルだった。それなのに、あの惨状だ。目も当てられない。
しかし、悪いことばかりでもない。どんなに緊張してコミュ力が低下しても、あいさつとお礼だけはちゃんと言えたことだ。これだけはほめてしんぜよう。
もしかしたら私は「Hi」と「Thank you」だけは脳を経由せずに言えるのかもしれない。学生時代に語学研修で海外に行ったとき、会話が無理でもせめてあいさつとお礼と愛想だけは、と心に決めていた。その努力の
ああー、悔しい!
めちゃめちゃ悔しい!
マッツもユアンも、どっちも後悔が残った。
いつかまたリトライしたい。
次こそは、ユアンの「How are you?」に「Lovely」って返すし、マッツに「Kill me」って言う! セクハラもしない! 絶対!
だからどうか、また日本に来てください。
そして、あんなに取り乱しまくったどうしようもない私の肩を抱いてくれてありがとう。二日とも体の感覚は失っていたので感触は覚えていないけど、ふたりの優しさは一生忘れない。
私はやらかしまくったけど、本物のユアンとマッツに会えた感動はそれ以上だったし、ふたりとも想像以上に素敵だった。
だからなんだかんだいいつつ、総合的にはいい思い出として残りそうだ。
これだけ書いておいてなんだけど、こんなオタクの醜態にここまでつき合ってくれる人が、果たしているのだろうか?
もしも「まあ、みんなこんな感じだよね」と共感してくれたり、私の無様なうろたえっぷりを見て「自分はまだましだ」とホッと胸をなでおろしたりしてくれる人がひとりでもいたら、私がかきまくった恥もいくらか報われるだろう。
コミュ力Lv.12が初めて海外セレブに会ってきた話〜東京コミコン2023レポート〜 朝矢たかみ @asaya-takami
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