第5話 助けれくれる理由

 佐藤くんの怒りが収まった後の放課後、帰ろうとしたら正門のところに佐藤くんが待っていた。


 誰かと待ち合わせかな。そう思いながら素通りする。


「千田さん? 一緒にいいかな?」

「えっ!? わたしを待ってたの!?」

「うん。そう」


 顔が赤くなるのを見られないように下を俯きながら歩く。隣にはあの佐藤くん。なんか一緒に帰ってるみたいに見えるじゃん。


 大丈夫かな?


「今日はありがとう。助けてくれて」


 佐藤くんの方からお礼を口にした。


「ううん。私が助けられてばかりだから。だから、少しでもどうにかしようと思っただけだから……」

「違うんだ。最初に助けてくれたのは千田さんなんだ」

「えっ?」


 私は助けた覚えなどない。佐藤くんは引っ越してきた人だし、それからも接点なんてないと思うけど、なんの事だろう?


「最初に会った時はほーちゃんて呼んでた。俺は二ー二ーくんって呼ばれていたんだ。覚えてる?」


 それを聞いて記憶の彼方にあるだいぶ前の記憶。それを掘り下げてなんとか表に出してくる。


 公園の砂場で知らない男の子が遊んでいて、なんだか意気投合したんだよね。また遊ぼうねって別れて。


 それから何度か遊んでいたんだけど、ある時近所の子に「お前誰だ!」って砂をかけられて押されたりしていじめられてたっけ。


 それを私が間に入って止めていじめた男の子を引っぱたいて泣かせたんだ。あの頃はそんな度胸があったんだったね。


「なんとなく……思い出したよ。でも、あの時は二ー二ーって名乗ってたよね?」

「ウチはちょっと特殊で、佐藤太郎は世襲制なんだ。俺で二十二代目」

「ぷっ! なにその制度!? 面白い! だからニーニーなの?」

「だよね。まぁ、それも目立たないためなんだけど。世襲するまでは番号で呼ばれるんだ」


 やっぱりあの角が生えていたことが関係するのかな?


「もう気づいてると思うけど、俺、鬼なんだ。妖力を使った時にしか角は出ないけど」

「やっぱり……その……妖怪? とかなの?」


 少しの沈黙の後に口を開いた。


「そうなんだ。でも今の世の中には妖怪が馴染んでほぼどこにでも居る状態なんだ。そんな状態からほーちゃんを守るために隣に引っ越してきた」

「そ、そうなの?」


 そんなこと言われたらドキドキして来ちゃう。私を守るために来ただなんて。


 あの時の二ー二ーくんがこんなにカッコよくなるなんて。あの時も可愛い顔してたと思うけど。


「これからも隣人としてよろしくね?」


 チラリと見た二ー二ーくんはニコッと笑っていて破壊力抜群の笑顔で私を見つめていた。


 そんな笑顔で見られたら私は。

 私の心臓は。

 破裂しちゃいそう。


 これは始まりの物語。

 ドキドキする学生生活の始まりに過ぎなかった。




 ── 完 ──

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片思いの佐藤くん、実は鬼らしい ゆる弥 @yuruya

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