第4話 佐藤くんの怒り
その日から佐藤くんは執拗に安倍くんに付き纏われているらしい。ボロを出さないようにするのが大変なんだとか。
あれ以来、ちょっと話しかけてくれるようになった。それで私に愚痴っている。
「ねぇねぇ、佐藤くんと最近仲良くない? なんでぇ?」
佐藤くんは人気がある。だから、私なんかが話しているとこうやってカーストが上の女子に目をつけられる。
「んー? なんでだろう? わかんないや」
「だったら、佐藤くんに近付かないで?」
「うん。わかった」
はぁ。情けないなぁ。こんな感じになっちゃうと隣の家だと知られるのもまずい。もし知られたらイジメの標的になりかねないや。
最近、私も監視されているみたいなのよねぇ。佐藤くんと話してないかとか。なんか面倒なことになってきたなぁ。
机に突っ伏してため息をつく。なんでこんなにブスなんだろう。私が可愛かったらこんな事にならないだろうに……。
佐藤くんが教室に入ってくると色めき立つ。まるで芸能人が来たかのように。私は見ないように視線を前に向けた。
私は佐藤くんと話したらダメだ。
「ねぇ、千田さん? 聞いてよ。アイツずっとついてくるんだよ?」
「……」
「千田さん? 聞いてる?」
「私と話さない方がいいよ。みんなに嫌われるよ?」
今のポジションはすごく曖昧な位置にいる。虐められてはいないけど、誰も話しかけてこない。そういう位置に私はいるんだ。
ピリッと空気が張りつめた。
息が、できない……。
「はっ! はっ! はぁ。はぁ。はぁ」
「千田さんに何か言ったのか? 誰だ?」
「誰も……何も……言ってないよ……」
私は懇親の力を込めてなんとか口から声を出した。
空気が重い。何かから押し付けられているような、重力が増えたような。
「千田さんに何かあったら……誰だろうと消すからな? 特にそこの女。お前らみたいな顔だけ見て群がってくる低俗な奴らは大嫌いだ。二度と俺の視界に入るな」
「は、はひっ!」
後ろでは人が倒れたような音がした。大丈夫かな。なんでこんなに私を助けてくれるんだろう? 私は佐藤くんに何もしてないのに。
「おい。殺気を抑えろ。ただの人には強すぎるぞ! お前やはり……」
退魔師だと言っている安倍くんが忠告するように佐藤くんに詰め寄る。なんか一触即発の自体だ。
なんとかしなきゃ。
席を立ち上がって睨み合う二人の元へ行く。そして、安倍くんの耳元に口を近づけた。
「あのね、この
「はっ! アイツめぇ。俺を出してやがったなぁ!」
一人で憤慨すると足早に廊下に出ていった。恐らく隣のクラスの
なんとか空気が柔らかくなった。
「千田さん……ありがと。助かった」
「えっ? ううん。私は何も」
「また助けられちゃったな」
意味深な言葉を残して席に戻った佐藤くん。
その姿に胸が締め付けられた。
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