第2話 イフリート、ワイバーン、落とす
俺が飛んでいると国外の草原に出た。
下を見てみると商会かなにかの馬車が走っていた。
ちょうどいい。聞いてみよう。
「なぁ、おい、あんた」
飛びながら声をかける。
「なにさ?」
キョロキョロ当たりを見てから上を見てきた。
「ワイバーンを見なかったか?」
「そ、それならこっちの道をまっすぐ飛んで行ったぞ」
「助かるっ!」
バタバタバタバタ。
また飛んでいったら。
「なにあれぇぇぇぇぇ!!!、」
下から叫び声が聞こえた。
そうして飛んでいるとやがて。
「目標はっけーん。ワイバーンが女の人を足で持ってるであります」
前方にワイバーンが見つかった。
呑気にとんでやがる。
「まてこらぁぁぁぁあぁぁあ!!!!」
叫ぶとワイバーンは振り返って俺を見た。
「??????」
首を傾げていた。
数秒目と目が合っていたが俺が再度叫ぶ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
バタバタバタバタ。
全速前進!
ギョッとしたような顔をするワイバーン。
「ギュピーーーーーーー!!!」
向こうも負けじとスピードアップ。
だが、そうはさせん。
「おらぁ!」
最後の羽ばたきで俺は一気に距離を詰めた。
とっ。
ワイバーンの背中に乗った。
「よう。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ブンブンブン!
首を縦に振るワイバーン。
「お前が今足で持ってるの人よな?」
「ハ、ハイ」
「ん?人間の言葉が分かるのか?」
「スコシ」
「ならとりあえず降りよっか。話聞くからさ」
俺はそのままワイバーンを草原に着地させた。
「うぐっ」
捕まっていた女の人が降ろされた。
その人を脇で抱えて俺はワイバーンに言った。
「んじゃあな。ったくこんなところまで来させやがって」
そう言って帰ろうとしたらワイバーンが頭を下げてきた。
「ゴメンナサイ。ムスメガ」
「娘?」
「ビョウキニナッタンデス」
「なるほど。分かった。それで人間に容態を見させようとしたってことか」
「ハイ」
「よし、そんなことなら俺も連れて行け」
「イインデスカ?」
「俺の気が変わらんうちにな」
そう言うと俺はワイバーンの背中に乗った。
「アリガトウゴザイマス」
そのまま俺たちはワイバーンの巣穴に戻ってった。
俺は女の人がワイバーン娘の看病をしてる間待っていたのだが。
「毒にかかってますよ。このワイバーン娘」
「ソ、ソンナ」
「薬草を買うにしても高価なものね。5万くらいは必要かも。もちろん悪いけど私が出す義理はない」
「クッ……」
万事休すって感じらしい。
そこで俺は言ってやった。
「ちょうどここに5万ある」
ピラピラ札束を動かす。
「ナ、ナンデモシマス!クダサイ!」
頭を下げてくるワイバーンに言った。
「お前とムスメ俺の家来になれよ」
「ケライ?」
「ペットになれって言ってんの。それならやるよこんな紙切れ」
そう言うとワイバーンは頷いた。
「ナリマス。クダサイ」
「ほらよ」
女の人に金をやったんだけど。
「私持ってないですよ?薬草なんて」
「マジかよ」
「あ、でもさらわれてる時に商会の馬車を見ましたね。あの馬車なら薬草くらい持ってるかも」
「あれか。俺も見たわ」
俺は馬車のことを思い出していた。
「よし、行ってこよう」
俺はそう言って巣穴の入口に立った。
「オトモイタシマス」
そう言ってワイバーンは俺の横に来たけど。
「俺の飛行魔法舐めんなよ。お前は娘といてやれ」
「キュン♡」
俺はそのまま巣穴から飛び立っていった。
バタバタバタバタ。
商会の馬車が見えて降りた。
「うわっ!人が落ちてきた!」
そう叫んでいる商会の人間に5万突き出した。
「おい、薬草くれ」
「ま、毎度ありっ」
薬草を貰って飛んでいくとまた声が聞こえた。
「な、なんだありゃぁあぁぁぁああ!!!!人が飛んでるぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
俺は巣穴に戻ってきて女の人に薬草を渡した。
そのままワイバーン娘の治療に入る女の人。
「終わりました」
手当が終わると疲れたのか休み始めた。
それからワイバーンは人型になった。
「あ、ありがとうございます。あなたは命の恩人です」
「なに、気にするなよ。助け合いは基本だろう?」
そう言ってやると娘の方も人型になった。
肩くらいまでの黒色の髪の毛に長い尻尾が生えた女の子。
「ありがとう。お兄ちゃん」
俺は頷いて女の人を見た。
「私からもありがとうございました。本当に怖かったですよワイバーンに連れ去られて」
その件についてはワイバーンも謝っていた。
ということで一件落着となり俺たちは国に帰ることになった。
◇
酒場に戻ると女の子は俺に礼を言ってきた。
この2人に関してだが元凶はワイバーンだったので、特に何も言わないことにした。
さすがの俺もそこまで鬼では無いのでな。
酒場で飲んでるとワイバーン娘の方が言った。
「お兄ちゃん。私はレイって言うの」
「レイ、か。覚えておこう」
「ケライなんだけど、私だけじゃだめ?元々私が原因みたいだし」
首を傾げて聞いてきた。
「俺としては別にいいけど」
さすがに親子を引き剥がすのはかわいそうだと思って2人に言っただけなんだよなぁ。
「レイ、ひとりで大丈夫?」
「うん。私人間の国で生活したい。私頑張ってお母さんに仕送りするから」
そんな微笑ましい会話を聞いているとポカポカしてきた。
で、ワイバーン母の方は言った。
「レイ。この人の事好きになっちゃったの?」
「うん。この人優しいから、この人好き」
ん?
うん?
「じゃあ、邪魔はできないわね」
そう言ってワイバーン母の方は俺に頭を下げてきた。
「イフリートさん。この子のことお願いしますね。レイ、頑張るのよ」
そう言って酒場を出ていった。
残された俺とレイ。
「イフリートさん、よろしくお願いします」
「あ、うん。こちらこそ」
正直こんなに人語をペラペラ喋ると思っていなかったからちょっと調子が狂っている俺であった。
「さてと」
立ち上がった。
「どこか行くんですか?」
「安い宿探すんだよ。金ねぇから」
「あ、ごめんなさい」
「あー、気にすんなよ。俺の散財癖のせいだよ」
勝手に自分のこと責められても困るので言っておく。
そんなわけで外に出ようとした時。
コツコツコツコツ。
またタキシードの男が俺の近くに来た。
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