第3話 イフリート、キーアイテム、入手



「なんすか?」


そう聞くとタキシードは手を叩いた。


「いやぁ、君は素晴らしいよ」


パンパンパン。

どうやら褒めているらしいけど。


「あんな子供を助けてあげて、しかも迷惑をかけたワイバーンまで助けてあげるなんて、素晴らしい心の持ち主だ」

「ど、ども、へへっ。そんなに素晴らしいかな?」


俺は普通だと思うんだけど。


スっ。

タキシードは名刺を渡してきた。


「私はこういう者だが泊まるところがないならウチに来ないかね?君のことが気に入った。是非とも泊まりに来て欲しい」


名刺を見るとどうやらこの男貴族らしいが。


「貴族さんがこんなところで食事をするんだな」

「ぜんぜんするよ。ははは」


そう言って酒場を出ていく男に俺は頷いた。


「ぜひ世話にならせてくだせぇ!」



貴族の邸宅につくとさっそくメイドが俺の案内を始めてくれることになった。


まずは俺たちが眠ることになる客室。

そして次はお風呂だった。


めちゃくちゃ広い風呂に案内された。


「おぉぉぉぉぉ、すっげぇ広い風呂だなぁ」


余りの広さに軽く感動する。


てかあれがあるよ、あれ。

ライオンの口から水出るやつ。


すっげぇ、初めて見たわ。


この中どうなってんだろ。

見てみよう。


ボガボガボガ。

水止まんなくて見えねぇわ。


「このライオンなんて言うんだろう」


そう呟くとメイドが教えてくれた。


壁泉へきせんって呼ぶ見たいですよ」

「イフリ壁泉覚えたっ!」

「イフリ?」

「あー、俺の名前。親しい人はイフリって呼ぶ」


そう言ってると俺はメイドに聞いてみた。


「これ外せる?ライオン」

「無理です」

「そっか。ざーんねん」


俺はそのまま脱衣所まで戻って服を脱ぐことにした。


「タオルとか必要そうなものそのへん適当に置いといてよ。後でとるから」

「かしこまりました」

「いやぁ、いいねぇ」

「なにがですか?」

「メイドっていいなって思って!君みたいな可愛い子に世話されるの嬉しい」

「ありがとうございます」


頭を下げて脱衣所から出ていった。


俺はレイの服を脱がそうと思ったけど。


「ひゃぁっ!」


上着に触ろうとしたら素肌を触ったような感覚だった。


「なに、今の」


聞くとレイは答えた。


「これ、魔法で見た目だけ変わってるだけなんです」

「へ?ってことは、裸だったってこと?!」

「はい」

「おいおい、とんでもない痴女だなぁ?!おい?!」


なんてこった。パンナコッタ。


俺は今まで裸の女といたわけか。

これ猥褻物陳列罪だろとか思ったけどこいつワイバーンだからセーフなのかな?


いや、もう複雑に考えるのは辞めよう。


「とにかく、中入ろうぜ。先入ってるよ」


そう言って俺は中に入る。


んで、再びライオンのところにいく。


ゴボゴボ水が流れてる。


あんまり触るのはよくないと思うけどさぁ。せっかくだから触りたいんだよな。


触ったことないし。


「なにしてるんですかー?」


レイに聞かれたから答える。


「あー、いや。これ手を入れるじゃん?」


ライオンの口から手を入れてあちこち触りまくる。


「大丈夫なんですか?そんなことして」

「ふふふ、レイよ。ライオンの口のなかには何かあるって相場が決まってるんだぜ。だから触るなって言われても触るんだよ。むしろ触らないと失礼だ」


右に左に上に下にと触る。


すると、何も無いようだった。


しかぁしっ!


一旦手を抜いて俺はカンフーの構えを取った。


「なんなんですか?その構えは」

「カンフー」


手を動かして水の流れを変えた。


湯船に注がれていた水の流れを洗い場の方へ流れるようにする。


これが俺の筋肉魔法【水流操作】だ!


「なんでそれで流れ変わるんです?」

「俺が魔法使いだからだ!」


ってわけで今のうちに中を覗く。


「なんだ、やっぱり何もねぇのな」


ガッカリ。

映画とかじゃなんかあるんだけど、そんなロマンのあるような代物ではなかったらしい。


水の流れを戻すとレイが体を洗い始めた。


「このお風呂というものは気持ちがいいですねー」


それからしばらくして体を洗い終わったレイ。

こちらに歩いてこようとしてたけど。


「きゃっ!」


泡に足を取られたようだった。


「せいっ!」


ライオンの口から水の流れを変えてレイの下に流す。

ついでに、湯船の水も蹴り出すようにして出した。


ザァァァァ。


波のように押し寄せた水がレイの転倒を止めて、ウォータースライダーみたいになってた。


「おぉぉぉぉぉ?!!!めっちゃ動いてますっ?!」


そして、そのまま最後は湯船にドボン。

ふぅ、危なかったな。


「ぷはぁっ!」


湯船から顔を出して俺を見てくるレイ。


「今の水の動きはなんです?」

「聞くまでもないだろう?魔法だ魔法」

「えぇ?!!魔法なんですか?!今の!すごい!」


レイがキャッキャして聞いてきた。


「他に魔法使えないんですか?」


「ん?他に、か。うーん。」


俺は酒場でやったように湯船の中に指を入れてかき混ぜ始めた。


勢いを増してスピードを得ていく水。


やがて湯船の中から上へ立ち上るとレイを包み込んだ。


「え?!どうなってるんですか?!これ」

「それはウォーターボールだ」

「これが?!すごいです!浮いてますよ!」

「俺の魔法は特別だからな。ガハハ」


そうやって会話していた時だった。

脱衣所の方から声が聞こえた。


「おふたりとも湯加減などはどうでしょうか?」


メイドの声。


「問題ないっすわ」

「かしこまりました。明日の朝応接間に来て欲しいと大旦那様が言っておられました。それだけ伝えに来ました」


それからメイドは聞いてきた。


「あの何か必要なものありますか?」

「必要なもの」


ふむ。


「女の子用の服を用意しておいてくれ。俺が連れてる女の子だ」

「かしこまりました」


それから俺は言った。


「それと君のパンツが欲しい」


ガタッ!

向こうから変な音が聞こえたけど。


「か、かしこまりました」


衣擦れの音が向こうから聞こえてきた。


「おいおいまじかよぉ」


俺が呟いてるとメイドは脱衣所を出ていったようだった。


「異世界人は冗談も通じないのか?あんなもんただのイフリートジョークだって。いっつあジョーク、おーけ?」


俺はとりあえず風呂から脱衣所に出てみた。


パサりと1枚の可愛らしいパンツが落ちていた。


パンツを拾いながら考察する。


(ここはゲーム的異世界である。ふむ)


それならば必要なアイテム以外は手に入らないわけ。


俺が前世でプレイしてきたゲームには無駄なアイテムが出なかった気がする。


つまり


(このパンツにはなにか深い意味があるに違いなぃっ!)


きっとそうだっ!


このパンツには俺が思いもしないほど深い意味があるに違いないのだぁあぁぁっ!


つまりこのイベントには考察の余地があるってわけだ!


(この超キーアイテムはどこで使うんだ?!)


まぁいい。今はインベントリの奥深くに大事にしまっておこう。


【かわいいパンツ×1を手に入れた】


ここまで言っといてメイドのパンツがキーアイテムのゲームとか俺は知らないけど。




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