Last Chapter:The World

 王党派会館を出た先に、ジャックを待っていたのは地獄だった。


 業火に焼かれ、再生しようとする不死者が、手を伸ばしては倒れを繰り返している。


 グラットーが自身を犠牲に放った爆弾ヘルシングが、辺り一帯の不死者を、向こう百年は封じる。


 ジャックは、目につく不死者の首を一人ずつ切り落として行った。

 ジュリアンによって不死化された王党派の兵隊、総勢二千余名。


 その全てをその手で殺し、地面に倒れたジャックを見下ろす影があった。


「怪物退治ご苦労様。お疲れかな?」

「チャールズ……」


 ジャックを見下ろしていたのは巡礼者ピルグリムの長、この世界にルスヴンと共に残っている、意思を持つ不死者。


「暫くはまだ、お前の言いなりになってやるよ」

「それは助かる。ルスヴンを倒すには、君の手が必要だ」

「チャールズ、俺はな」


 ジャックはチャールズに文句を言おうとして、そのまま意識を失った。流石にこの場にいる全ての不死者をその手で殺したのはやり過ぎだった。


 しかし、それが自身の責務だと思ったジャックは、決して歩みを止めなかった。


 意識の溶暗の中、ジャックはジュリアンに答えられなかった問いを思い出していた。


 貴様は何故私を殺す?


 俺はな、ジュリアン。

 この世界はもうと思っているんだ。

 不死者が統べる世界。この世界はもう、そうなってしまった。

 それに抗うことは出来ない。


 時代は否応なしに進み、人々の世界は進歩し、発展していく。


 だが、ものを止めることは出来ない。


 だから、その世界で自分が人間として生き延びることができる手段を、俺は探し続けているに過ぎないんだ。


 そんなことを。

 そんなことをジャックは、ジュリアンに答えるつもりでいた。だが、それはもう叶わない。


 だから、今度は自分が生き延びる為に殺したジュリアンの悲願もまた、として引き受けようと思う。


「それが俺の責務だ」


 気絶している筈のジャックの呟きにため息をつき、チャールズはジャックを背負った。




了。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イモータル・エンパイア 宮塚恵一 @miyaduka3rd

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ