第20話:冷やし中華で考えるミニマリズム
先日、ラジオからリスナーの投書としてこのような話が流れていた。要約すると「お昼は冷やし中華で構わない……なんて家族から気軽に言われるのが嫌。卵を焼いたりとか具を用意するのが大変なのに、簡単だと思われてる!」というようなものだったと思う。おそらく主婦の方で、夫や子供に対する愚痴なのだろう。
私に言わせれば「教育失敗」である。まず「冷やし中華は様々な具で彩られたものである」という固定観念を払拭できなかったのが悪い。「はい、冷やし中華できたわよ。具がない?文句があるなら自分でやってね」と言えないのは教育失敗であり、家庭内政治の失策でもある。
これは料理に限らず人間関係の落とし穴である。余裕があるときに相手に必要以上に尽くしてしまうことで、いざ余裕がなくなった時に手の抜き方・抜き加減がわからなくなってしまう。余裕があるときにこそ意識して力を抜いて、相手の限界を把握しておく(ついでにその限界を引き下げてしまう)べきなのだ。
そもそも具のない冷やし中華、結構ではないか。栄養バランス?そんなものは一食で完結する必要はない。だいたい、そうめんや盛りそば等はめんつゆのみで食べる場合が多いだろうし、ときには薬味すら省くだろう。
日本人は海外の食文化をアレンジするのが得意と言われるが、それはあくまでプロ側の話であって、素人サイドは外来料理のフォーマットを自己判断でアレンジするのが苦手だというのが私の印象である。冷やし中華もそうだが、例えばカレーライスも「肉・玉ねぎ・人参・じゃがいも」という定型に囚われている日本人は多いし、なんなら肉の種類すら固定されているような家庭も珍しくない。なんとも情けないことである。
閑話休題。家庭の冷やし中華といえばタレとセットになった生麺タイプのものが主流だと思うが、日持ちしないので私はあまり使わない。よく使うのは業務スーパー等で売っている乾麺や冷凍麺のように日持ちするタイプである。第13話「もっと親しもう中華麺」も参照のこと。https://kakuyomu.jp/works/16817330668798383529/episodes/16818093074684847067
当然、タレはついてないので自作する。基本は、醤油と酢を1:1(例えば大さじ1杯ずつ)混ぜ、そこに半分ほど(この場合は大さじ半=小さじ1と半)の砂糖を加え、仕上げに味の素少々とラー油またはごま油を垂らす。砂糖がなかなか溶けないので、可能なら早めに仕込んでおきたい。みりんを使うのも手だが、煮切らないのならアルコールに注意。配分については酢や醤油の味にもよるので、好みで調整をする。酢は中国の黒酢などがあればなお良い。
実際はそれを水で薄めるのだが、氷を浮かべたくなるときもあるだろうし、また麺の水切り加減にもよるので、まず原液を作ってから少しずつ薄めて調整するのが良い。食べているうちに薄まってくるので、最初は箸でつまんだ麺の半分ほどに濃い目のつゆを付ける、という食べ方もよい(伝統的な江戸の蕎麦の食べ方である)。
世の中には「ざる中華」という、そうめんや盛りそばと同じ和風のめんつゆで食べる文化もある。個人的にはつゆのほうにも多少の中華要素が欲しいので、めんつゆをベースにする場合でも酢やラー油を少々加えることにしている。
常備した食材のみで気軽に作れるミニマルな冷やし中華は、暑くて料理や買い物も辛くなるこの季節におすすめである。
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