第19話:そうめんを飽きるほど食べたい
「夏の時期はそうめんばかり食わされた」みたいな話を聞くと「いいなぁ」と思ってしまう。我が家ではもちろんそうめんを食べないわけではなかったが、その頻度はあまり高くなかった気がする。
だいたい家族が米食至上主義者の上、悪い意味で手間を掛けるタイプの人間で、そうめんであれば1人分ずつ(ときには一口分ずつ!)皿に盛って、その上で市販のめんつゆであってもあらかじめ煮立てて冷ますといった具合に、必要以上に工程をかけたがるのである。そうめんとは面倒な料理であるらしい。
自分で作るようになると、そのような無駄は当然省く。茹で上げたそうめんはザルにあげて流水で洗ったらボウルに乗せてそのまま食卓にドン! めんつゆも氷水で割ってそのまま! 実に簡単である。どうも一定世代以上にはそうめんは高級品のイメージがあるらしく、このような雑な扱いには抵抗があるらしい。
私としては毎食そうめんが毎日続いても多分耐えられると思うのだが、我が家では米を1年分まとめ買いして備蓄しているという都合上、そうめんばかりを食べてもいられない。もっとも栄養が偏るのもよろしくないので、これで良いのだろう。
そうめんが飽きられる要因の一つは味のバリエーションの乏しさで、このあたりも保守的な層が台所を支配していると気になるポイントかも知れない。例えば細かく刻んだトマトを入れてみるとか、酢醤油に鶏ガラスープで中華風にしてみるとかの工夫をすると印象ががらりと変わる。
やや人を選ぶが、タイカレーペースト+ナンプラー+砂糖なんてのもおすすめだ。タイカレーの缶詰をそのまま使うというアイディアもよく見るのだが、個人的には冷やして食べるとココナッツミルクの脂肪分が凝固するのであまりおすすめしない。ミルキーな成分がほしければ、ココナッツミルクの代わりに豆乳を使う(タイカレーペーストに混ぜる)ことをおすすめする。なお、中華スープにしてもタイカレーにしても、最初は少量のお湯で溶いてから氷をいれること。
そうめんは、不思議と外食ではめったに見ることはない。これはおそらくそうめんというものが一般的には乾麺として流通しているからであり、伝統的に製麺所から生麺(うどんやそば、ラーメン)を調達している店舗と相性が悪いからではないかと思われる。仮に、うどんやそばと混在させると調理にも問題が出てくるだろう。
というわけで、そうめんというのは極めて家庭的な麺類だと言える。この夏こそは飽きるほど食べてみたいものである。
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