第18話:パスタ料理100変化
私は1年近くにわたってパスタ(スパゲッティなどのロングパスタ)がテーマの料理小説を書いていたことがある。毎週更新で、自己流のオリジナルレシピが付いていた。全て自分で考案したうえで実際に作ったもので、そのレパートリーは公開しているだけでも50種類を超える。
・小説本編
https://kakuyomu.jp/works/16817330653420468121
・レシピ集
https://kakuyomu.jp/works/16817330655574974244
もともと育った家庭の食文化では、パスタ料理というものはほぼ無かった。レトルトなどで出来合いのソースを買ってくることはあるが、手作りのパスタ料理というものを食べた経験は、おそらく皆無だったのではないかと思う。
私がパスタを積極的に食べるようになったきっかけは一人暮らしである。当初は炊飯器もなく、食器は鍋とザルと深皿だけだった。ご飯を食べるのはもっぱら昼の外食で、朝晩の食事は(弁当などを買ってくる場合を除き)ほぼ乾麺だった。そば、うどん、そうめん等を試したが、コスパと汎用性からパスタ(とりわけ、ゆで時間が短めの細めのスパゲッティーニ等)を選ぶ機会が多くなった。
日本の麺や中華麺と異なり、パスタには塩分が含まれていないのが普通だ。一般的なレシピだと茹でるときに塩を入れるのが基本とされるが、私は入れないほうが味付けの幅が出るので好みである。麺自体に味がないからこそ、味付けの自由度が広がるというわけである。
たとえば和風パスタは枚挙にいとまがないのに対して、洋風の日本麺で定着したのはカレーうどんくらいしか思いつかない。保守的なイメージの強さもあるだろうが、塩味のせいで味付けのバリエーションに限界があるというのも確かだと思う。
パスタ料理初心者におすすめするなら、やはりミートソースである。レトルト(ミートとは名ばかりのシャバシャバソース)よりも間違いなく満足できる。応用すればキーマカレーになるし、カレーにしなくともご飯にかけて食べても美味。ソースだけでも完結してるので、多めに作っても持て余しにくいのもありがたい。
作り方はいろいろあるだろうが、ケチャップとみりんを使って甘口に仕上げるのが私流である。トマト缶ではなくケチャップを使うことで、少量でも気軽に作ることができる。私にとってのケチャップは調味料と言うよりも一種の食材なのである。たまに実家に帰ったとき等に、冷蔵庫の片隅で賞味期限を迎えてたりするのを見ると悲しい気持ちになる。もっとケチャップは活用できるというのに。
ケチャップに限らず、パスタ料理の受容性の高さを活用すると残り物を処理しやすくなる。もう少し前向きな言い方だと、旬の素材などをアドリブ的に取り込みやすい。2024年のKACでは連作短編に挑戦したのだが、「お題に沿った内容と、旬の食材を取り入れる」という縛りで全9作品を書き上げることができた。
パスタ料理は手軽な一方、店にもレトルトソースが大量に並んでおり、自分ではあまり作らないという方も多いかもしれない(以前の私のように)。しかし間口は広い上に奥は深いので、ぜひとも挑戦してみてほしいところである。
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