最終話:新たな旅立ち。

「この娘、飛揚の父上のカタキの娘だぞ・・・」


桂花はその話を、キョトンとした表情で聞いていた。


「それが誠なら桂花・・・おまえなぜ魏連翔きれんしょうの娘だということを私に黙っていた?」


桂花は、切なそうに首を横に振った。


「私・・・父とはもう何年も疎遠になってるんです」

「縁を切ったも同然・・・もう私には関係ない人です」


「私が15の時、私の母は父の悪行に業を煮やして私と書欣シューシン

連れて密かに「南陽千なんようせん」 に匿ってくれたんです。


「そうか、それで居所を魏連翔きれんしょうに見つかったと・・・。


「桂花・・・おまえには罪はない」

秋花閉月しゅうかへいげつ聞いてのとおりそういうことだ・・・」


「信用できません・・・なんせあの我らを裏切った男の娘ですからな」


「疑えばきりがなかろう」

「もし桂花が私に嘘をつき、あざむいていることが分かれば私自ら手を下す 」


「ですが、このことが城内に知れたらタダでは済みませんぞ」

「前国王に呪いをかけて死に追いやった極悪人の娘をそばに置いておくなど

言語道断・・・」


「みなが騒ごうが・・・すべてを決めるのはこの私・・・たとえ親しい臣下と言えど、意義をとなえるものは私が許さん」


「もし私と桂花のことで、みなに迷惑や、危害が及ぶのであれば、私は桂花

を連れて城を捨てる」

「あとは弟の「蓮央美れんおうび」に全て任せる・・・体制に影響はなか

ろう・・・それで誰にも文句は言わせん」


「無理に止めはいたしません・・・では、そういうことになれば私も

おふたりと一緒に参りましょう」


「お前もついて来るのか?秋花閉月しゅうかへいげつ


「城にいるのは退屈きわまりありません」

「それに私がついていた方が、なにかと重宝しますぞ・・・たとえば現実問題

宿の宿泊費用とか路銀のことも含めて・・・たとえ国王であっても巷に出れば、

勝手許されませぬゆえな・・」


「分かった・・・おまえに従おう」


最終的に桂花を城に置くことは閣議によって却下された。


国王と言えど、個人的わがまなは許されないのだ。

飛揚は桂花と秋花閉月しゅうかへいげつを連れて天空の城を降りた。


「さあ、桂花これからどこへ行こうか?」


そう言われて桂花は飛揚を見た。


「私はどこへでも・・・たとえ地の果てまでも飛揚についていきます」


「これからはずっと一緒だからな、なにがあっても・・・」


「旅に出る前からもうそれですか?」


秋花閉月しゅうかへいげつが皮肉たっぷりに言った。


こうして三人の旅がはじまった。


「では雷攻らいこうおまえに任せる・・・西でも東でもおまえの赴く

ままに進め」


だが、桂花には魏連翔きれんしょうによって恐ろしい呪いがかけ

られていたことを飛揚も桂花自身も秋花閉月しゅうかへいげつさえ

知らないことだった。


桂花が飛楊と一緒にいるかぎり、いずれ飛楊の体から精気が失われて

弱った体に悪気が流れ込みやがて徐々に命が失われていくことになった

だろう。


だが、この旅の途中で桂花の呪いを見抜いた桂花は秋花閉月しゅうかへいげつによって恐ろしいの呪いは解かれることになる。


もしこの旅が飛揚と桂花ふたりだったら、飛揚の命は終わっていたかも

しれなかった。

秋花閉月しゅうかへいげつがいたことは、ふたりのとって幸いした。


そしてこの旅から飛揚と桂花は魏連翔きれんしょうとの本悪的なな戦いに

巻き込まれていくのだった。


完。


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鴛鴦之契(えんおうのちぎり)〜 飛楊と桂花〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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