第4話:飛揚の告白。

「私も妻に手出しをする者は容赦せぬがよいか・・・そうなるとここにいる者

共は誰一人生きては帰れんぞ」


そう言うと飛揚は砍妖剣かんようけんを構えた。

砍妖剣かんようけんは妖気を帯びていて蒼い光を放っていた。

飛楊が気合を入れるとさらに眩しく大きく光を放った。


「そ、それは砍妖剣・・・」

「唯一、黒龍を倒した者だけが持つと言う伝説の妖刀」

「私も伝承の書物の絵でしか見たことがなかったからな」

「実物を見たのははじめてだ」


「しかたはない、このようなことで無意味に死傷者を出すわけにはいかん」

「者共この場は一旦引くぞ」


するとさっきまでバラバラだった男どもが一箇所に集まったと思うと、

さっきの「韓湘魏かんしょうぎ」と言う男がなにやら呪文を唱えた。


光が男どもを包み込むと男どもはその場から煙のように消え失せた。


「妖術か・・・」


桂花けいか・・・老婆は?」


桂花はすぐに飛揚をつれて家に中に入ったが、すでに老婆、書欣シューシンは絶命していた。


書欣シューシン・・・」


「死んでおるか?・・・気の毒に・・・」


書欣シューシンは私が子供の頃から一緒で、私を育ててくれた母親と

同じような存在だったんです」

「なのに、こんなことで・・・私のせいです・・・」


「亡くなったものはいくら嘆いても帰らぬ、放っておけ」


「冷たいんですね、飛揚さんは・・・」


「事実を述べたまで・・・死んだ者は二度と生き返らぬ」

「それから、私のこと飛揚でよい、さんはいらぬ」


「そうだ、さきほどは、そなたのことを妻などと言ってすまなかった 」

「あのような状況であったゆえ、妻などと言ってしまった」

「許せ、悪く思うな」


「いいんです・・・それで私は救われたんですから」


「ならよいが・・・」

「では急いでここから出るぞ」

「老婆を嘆いてる暇はない・・・奴らは必ずまた来る」


「この程度のことで諦めるやからではなかろう・・・ここにいたら

そなたの身が危険だ・・・それにここにいる必要も、もうなかろう?」


「私と一緒に来い」


「でも書欣シューシンを弔ってやらないと・・・」


「そのようなことをしている暇はない、行くぞ」


「どうしてそこまで?私に?」


「意味などない・・・おまえを守るためだ」

「それとも他に行くところでもあるのか?」


「いいえ」


「では私と行くしかなかろう」


「あなたは?・・・先ほど族の中の一人があなたのことを「東照一族とうしょういちぞく」の「李王喜りおうき 」と言ってましたけど・・・飛揚は「紅来環こうらいかん」の国王様なんですか?


「そうだが・・・そんなことは、この際どうでもよかろう」


「どうでもよくないです」

「国王様と一緒に行くなんて、恐れ多いです」


「よいではないか?、私が来いと言っておるのだ」

「それとも私に不服でもあるのか?」


「そんなことはありません」

「でも一緒に行くってことは、お城に行くってことでしょ?」

「私のようなものがお城に行くなんて、いいんでしょうか?」


「かまわん・・・遠慮する必要などない」


「でも・・・身分が違います」


「そのようなものはどうでもよい、私が来いと言ってるのだ・・・素直に従え 」


「国王様とお会いしてまだ2度目ですよ」


「私にとってはおまえとの出会いは一度で充分なのだ」


「え?」


「・・・んんん、恥ずかしい話だが、私はお前に惚れたのだ」


「惚れた?・・・私にですか?」


「そうだ・・・誰でもなく、おまえにだ桂花けいか

「だから、先日休ませてもらった時、はじめておまえを見て好きになって

しまったと言っているのだ 」


「あの?、もう一度おっしゃっていただけます?」


「そのような恥ずかしいことを二度も言えるか・・・」

「私の気持ちは伝えた・・・分ったであろう?、分かったら、私と来い」

「ああ、思いの丈を吐き出したら、少し楽になったわ」


「それこそ、恐れ多いことです」


「そのようなことはないと言っておるだろう・・・じれったい!!」

「な、頼むから私と一緒に来てくれ」

「そして私のそばにいてくれ・・・無げにはいたさぬゆえ」


「でも・・・」


「ではどうしろと言うのだ?」

「ここ残るのか?」


「分かりました・・・他に何も思いつきません、ついて行くしかなさそうですね」


「それでよい」

「嫌だと言っても、無理やり連れて帰るからな」


「もう強引」


「あ、よいか何度も言わんぞ・・・私のことは国王様と呼ぶな、飛揚と呼べ」

「分かったな・・・分かったら雷攻に乗れ」


そう言って飛楊は雷攻を指差した。

飛揚は桂花を雷攻に乗せると、急いで南陽千をあとにした。


つづく。

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