第3話:魏連翔(きれんしょう)の手下。

飛揚は剣の達人、飛揚の武術の師匠でさえ彼には太刀打ちできないほど

群を抜いていた。

だから城中で飛揚に敵う相手はだれひとりいなかった。


しかも飛揚は魏連翔 きれんしょうの妖術にも免疫を持っていた。

つまり妖術には惑わされないよう幼少の頃より訓練されていた。


そして日食の夜、香粧山かしょうざんの仙女「秋花閉月しゅうかへいげつ」の力を借りて異世界「妖連郷ようれんごう」まで行って、父を食い殺した黒龍までも倒してしまう。


飛揚に倒された黒龍は「砍妖剣かんようけん」と言うつるぎに姿を変え

飛揚が所持することなった。


砍妖剣は読んで字のごとく、妖魔を叩き切るための剣であって、まさに父のカタキ

魏連翔 きれんしょうを打つための妖剣だった。

この剣だけが父のカタキを倒せる唯一の剣なのだ。


さて・・・桂花けいかがなぜ、老婆と「南陽千なんようせん」と言う

人里離れたところに住んでいるのか・・・。


それは桂花の母親「妙蓮姫みょうれんひ」が夫魏連翔 きれんしょうの悪行を見るに見かねて、このままでは夫は自分の娘まで人質に差し出し至福を肥やすのではと恐れ、桂花と乳母の書欣シューシンを連れて密かに城を出た。


そして未踏の地「南陽千なんようせん」にふたりをかくまったのだった。


だが、「妙蓮姫みょうれんひ」がふたりを「南陽千なんようせん」に匿う前に魏連翔 きれんしょうがある呪いを桂花にかけていたことは知らなかった。


その後、魏連翔 きれんしょうは娘、桂花の在り処を探り出し配下のものを

「南陽千」に向かわせた。


その頃、桂花のことが忘れられない飛揚は、彼女のことを想ってため息ばかり

ついていた。

もう一度、桂花に会いたい・・・飛揚はついに思い余って彼女に再び会うため

家来に内緒でひとり城をでた。


狩りに出かけた道を辿り、森を抜けて、例の湖まで・・・。

飛揚はまた桂花に会えると思うと、心がはやった。


森を抜けると民家が見えた・・・が、以前来た時とは様子が少しばかり違っていた。


数人の男どもが民家の周りを囲んでいて家の中から桂花が男に連れ出されて

いる最中だった。

とうぜん飛揚は、その光景を目にして、ただごとではないことを察知した。


自分の意中の人のピンチ、飛揚が放っておくはずがなかった。


すぐに民家まで雷攻で駆け寄ると、男どもに向かって言った。


「私の妻に何用か?」


「ん?・・・妻だと?・・・なんだ、おまえ?」


「何用かと聞いておる・・・」


「ケッ、どこの誰かしらんがおまえには関係ないこった、とっとと失せろ」


桂花は泣いていた。

桂花は男に腕を掴まれて?それがもとで泣いていたのか?・・・


書欣シューシンが・・・書欣シューシンが・・・。


「桂花・・老婆がどうかしたか?」


すると家の中から、男どもとは違った少し高貴な衣装を纏った男が出てきた。

見たところ武将ではなく、どことなく仙人のように見えた。


そして仙人のような男は飛揚を見て動揺した。


「おまえは・・・「東照一族とうしょういちぞく」の「李王喜りおうき


「私を知っておるのか?、そのほう」


紅来環こうらいかん」の国王がなにゆえこのようなところに・・・。


「そこにいる桂花は私の妻だ、自分の別邸に帰って来て何が悪い」


そう言いながら飛揚は雷攻を降りた 。


「妻だと?・・・お嬢さんがおまえの妻だと?」


「私と桂花はこの別邸にてすでに契りを結んでおる」

「貴様らこそ、桂花に何用で参った」


私は魏連翔きれんしょうの配下のもので名を「韓湘魏かんしょうぎ」と申す者・・・」

「我らはお嬢様をお連れするために来たのだ、ゆえにたとえ夫であろうと我々の

邪魔はさせん 」


そのほう今、魏連翔きれんしょうと言ったか?・・・聞き捨てならん名前が

出てきたな」

「おまえらは魏連翔きれんしょうの配下の雑魚どもか・・・」

「なるほど・・・」


そう言うと飛揚は砍妖剣かんようけんを抜いて、すばやく動くと桂花の腕を掴んでいた男の喉元に剣の切っ先を突きつけた。


「妻の腕を話せ・・・さもなくば首が飛ぶぞ」


男はビビって桂花の腕を掴んでいた手を離した。


「桂花・・・こちらへ」


桂花は男の腕をふりほどいて飛揚のそばまで駆け寄った。


「怪我はないか?」


「はい、私は大丈夫です・・・でも書欣シューシンが・・・。


「貴様ら、老婆になにをした?・・手をかけたのか?」


「我らの邪魔立てするものは誰であろうと容赦はせぬ」


「私も妻に手出しをする者は容赦せぬがよいか・・・そうなるとここにいる

者共は誰一人生きては帰れんぞ」


つづく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る