第17話

どうしてこうなったのだろうか。

自分の席で、ヒータは自分の行いを責めた。


どうしてもっと手加減しなかったのだろう。

どうしていい勝負をしているような雰囲気にしなかったのだろう。

そもそも、なんで勝負を受けてしまったんだろう―――。


ヒータがそこまで悩む理由は、彼女の左隣り―――丁度スイの真横にいる男子生徒、ガウラ・ダーズリーと関係があった。


私、ヒータ・レカリウルは、先日の決闘でガウラ・ダーズリーに勝利した。

その対価として私は彼に「金輪際私に近づかないこと」と命じた。

ようやく安心して学校生活を満喫できると思った次の日。なぜかスイの横に彼がいたのだ。

「なっ…私、近づかないでって言いましたよね!?」

「俺はお前に近づいているのではない。スイに近づいているのだ」

スイは困ったように眉を下げる。

「私は絶対ヒータさんが怒るからやめたほうがいい、とは言ったんですけどね…」

「別にいいだろう。俺はお前ではなく、俺の友人に会いに来ただけなんだからな。

嫌なら向こうに行ってろ」

「グゥッ…」

しかし、スイちゃんは私の大切な友達なので、当然諦められるはずもなく

仕方がなく横に座っているわけだ。大変不服である。




(…よし、順調だ!)

ガウラは心の中でガッツポーズを決めた。

これならヒータに近づける。もしかしたら、このヒータと仲のいいスイとやらとも仲良くなれるかもしれない。そうすれば、よりレベルを上げるコツを手に入れる可能性が高くなる。

「それにしても、決闘の時のヒータさん、強かったですねぇ」

「!」

(ナイスだ!スイ!)

いつの間にかガウラに協力してしまっているスイ。

大変都合の良い状況に、思わずガウラは話に乗った。

「そうだな!一体どんな訓練をしているんだ?」

「え?」

(なんか急にグイグイくるなあ…)

ヒータは少し驚きながらも答える。

「ただ自分の苦手属性を持っている魔物を毎日倒しただけです」

「…は?」

ガウラは信じられない、と目を見開いた。

「お前、バカじゃないのか?お前の属性は闇属性だろう。光属性の魔物など見たことも聞いたことも…」

(しまったぁぁぁぁ!!!)

自分としたことが忘れていた。光属性の魔物はとても希少で、存在を知っている者すら数少ない。

それを一貴族令嬢が知っているなど、不審すぎる。


実際自分が光属性の魔物の発生する場所を知っている理由は、ゲームをしている時に

隠しルートで発生した特殊イベントをクリアしたことがあったからだ。

確かあれは、光属性の魔物を三匹、それも別種類のものを見つけるという鬼畜イベントだった。国中を歩き回り時に魔物を倒し時に盗賊に襲われる。

とにかく鬼畜。まさに鬼の所業であった。


「…知り合いが見つけたらしく、教えてもらったのです」

「その知り合い何者なんですか…」

スイの適格なつっこみを、ヒータはあえてフル無視した。

「とにかく、もしガウラ様がレベルを上げたいと思っているのなら、苦手属性の魔物と戦うことを勧めます。強ければ強いほど早くレベルが上がります」

「そ、そうか…」

ガウラは暫く戸惑ったようにこちらを見ていたが

やがて決心したような顔でどこかに行ってしまった。

(…結局、何がしたかったんだろう)

最後までよくわからないガウラの行動に、ヒータは首を傾げた。

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裏ボス悪役令嬢、だから何? 青空冬 @Huyu44

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