とあるドラゴンを拾った話
どらすず
第1話 出会い
これは、僕の日常に突然起きた不思議な物語。
僕はアパートの一室を借りて一人暮らしをしている。だから当然何をするにも一人でしないといけない。ご飯はできるときは自炊をして、できるだけ健康的な生活を送っているつもりだ。
ただ、今日に限っては冷蔵庫がすっからかんで戸棚の中も何もなかった。
「今日は雨だからあんま外出たくないんだよなぁ…」と思いつつ仕方なくスーパーに向かった。
何を買うかは決まっていた。じゃがいもに、にんじんに、たまねぎと牛肉だ。ここまで言えばわかる人も多いと思うが、今日はカレーを作ろうと思い、あえて近くのコンビニではなく少し遠いスーパーに行ったのだ。それでも歩いていける距離だから別に何も問題はない。
どうせ雨の中歩いていくんだからおいしいものを食べないとどうも気がすまない。
そう思って、肉はいつも買ってるものよりちょっと高いものを買ってみた。これがプチ贅沢ってものなのかな? と思い帰路につく。
食材を袋に入れてわくわくしている帰り道、路地裏から何か鳴き声が聞こえた気がした。猫かな? と思いつつ吸い寄せられるように僕は路地の中に入っていった。
今思えば何か不思議な力が働いていたのではと思う。
そこにいたのはダンボールに入った…猫……ではない…犬……でもない。
どこかで見たことのあるような感じだが、雨も激しくなってきて暗くなり、路地に入ったところなのでよく確認できなかった。
ひとまず、そのままこの子を置いて家に帰ってしまったら見殺しにしたのと同じになると思い、家に連れ帰ることにした。
うちのアパートはペットを飼うこと自体は許可されているが、住んでいる人がみんな嫌っている。
だからあまり乗り気ではなかったが、この子の命には代えられない。
すぐに動物病院にでも行って様子を見てもらおうと考えていた。
できるだけ人目につかないよう隠れながらダンボールを抱えて家に運ぶ。
途中近所の人と会ったが何もバレなかったようで安心した。
無事、何事もなく、家に到着したが、雨のせいでずぶ濡れになってしまった。
この部屋をこの格好で過ごすのも風邪になったらいやだ。
そこで、この子も濡れて汚れたり寒かったりするだろうからと一緒に風呂に入ろうと思い、ダンボールを置いて中から抱き上げる……
ただ、その抱きかかえていたのはやはり猫でも犬でもなかった。一見鱗があるので爬虫類のように見えたが、全体的にただの爬虫類には見えなかった。
僕が今まで見たことのないような容姿だった。
でも何か見覚えがある。
不思議に思いながら、僕は浴槽に溺れない程度の深さでお湯を入れた。熱いとまずいと思ったのですこし水も入れてぬるめのお湯にして、そこにこの爬虫類のような子を入れた。
シャワーをかけてやって、泡立てた石鹸で洗ってやった。
そうするとみるみるうちにうろこが輝きだしてきれいになっていくのを感じた。
あのときあんなに汚れていたのか…と思いつつ最後に泡を落としてやると、そこで初めて気がついた。
そんなことありえないとは思っているが、それ以外の何にも見えない。
だって翼が2つ背中についている。
もはや疑いようがなかった。
「ドラゴンだ」
僕はそう思った。
僕はドラゴンが好きだ。…といっても当然創作の絵とかでしか見たことはないが。
なぜもっと早く気づかなかったんだろうと不思議に思った。でももいこの際そんなことはどうでもいい。
今はなんであんな路地にドラゴンがいたんだ?という事の方が疑問だ。
しかし真相を確かめるすべはない。
ただ、僕はこの瞬間ある決意をした。
「絶対この子を守ってやる」と。
万が一動物病院につれて行って検査を何個もさせられてしまいには大病院に連れていかれて辛い目にあったらどうしようと思うようになった。
だってとてもこの世の生き物とは言えないから。
僕が守ってやろう。そう思った。
そう一つ正体が知れたので自分もサクッと濡れた体を洗う。
風呂から出てタオルを出してドラゴンを拭いてやる。
タオルで拭かれるのが気持ちいいのか目を閉じてやさしい顔をしている。
僕のことを信用してくれたと思ってもいいのだろうか?
風呂から出たらまずは、ずっとあの路地裏にいてお腹がすいているだろうから、ごはんをあげることにした。
一体ドラゴンって何を食べるんだろう?
一応カレーを食べようと思って買ってきた肉と野菜くらいならあるが…
とりあえず全部切ったりして口の前に見せてみる。
草食なのか肉食なのか雑食なのかよくわからない。
でもさっき見た感じ歯は尖っているように見えたので肉食なのかもしれない。
ドラゴンだとその辺もちょっと違ったりするのかな。
でもやっぱり肉に食いついているみたい。
でも野菜も食べている。
ドラゴンも色々食べるんだなぁと思った。
僕のカレーはなくなっちゃったけど、また買って来ればいい。
今度はこの子のためにももう少し多めに買おう。
明日も買い物に行かないとな。
ついでに他にも色々買ってみよう。
一体これからどんなことが起きるのか楽しみだ。
そこで日記をつけることにした。
日記をつければこの子の小さな変化にも気付けるかもしれないし、何よりこの子が一体どういう経緯で出会ったのか、暮らしたのかの証拠になる。
毎日が楽しくなっていく予感がする。
とあるドラゴンを拾った話 どらすず @drago_suzuki58
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